ネアンデルタール人の知名度と埋葬

 ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)は、すべての現代人が含まれる現生人類(ホモ=サピエンス)を除く各系統の人類のなかで、もっとも有名だと言えるでしょう。これは、ネアンデルタール人がヨーロッパや西アジアといった発掘の進んでいる地域に分布しており、発掘数が多く研究が進展しているためです。ここにヨーロッパ中心主義を見てとることは容易なのですが、改めて、現代の知の基本的枠組みがヨーロッパで築かれたことを思い知らされます。

 また、形態学的にネアンデルタール人は現生人類にかなり似ており、現生人類にとって最後の隣人であると長く考えられてきたので(ネアンデルタール人よりも後まで生存していたとされる、ホモ=フロレシエンシスの発見・公表は21世紀になってからです)、現生人類の来歴を明らかにするための格好の比較対象となったことも、研究の進展を促し、知名度の向上につながった、と言えそうです。ただ、ネアンデルタール人の厳密な解剖学的定義がなされたのは20世紀後半になってからで、発見から100年以上経過してのことです。

 さらに、ごく単純な要因として、ネアンデルタール人の定義により多少年代は前後するとしても、ネアンデルタール人の出現は人類史のうえではかなり新しく、その滅亡が人類史ではつい最近だという年代の新しさが、現生人類を除く他の人類よりも多い発掘数の要因になっているでしょう。発掘数の多さは、ネアンデルタール人の習慣に起因するところもありそうで、ネアンデルタール人の幼児人骨の発掘例が現生人類を除く他の人類と比較して多いことや、その他の人骨の発掘例から考えて、ネアンデルタール人が埋葬を行なっていた可能性は高く、それが発掘数の増加につながっている、と言えるでしょう。ただ、現在のところ、ネアンデルタール人の埋葬で現生人類ほど複雑なものは認められておらず、現生人類と比較すると。ネアンデルタール人の埋葬はひじょうに簡素なものだったのでしょう。

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