斎藤文男「日中の道」

 毎日新聞の記事です。斎藤氏は元毎日新聞記者で、現在は南京大の教師とのことです。中国人(ここでは中華人民共和国の国籍を有する人という意味です)の反日意識について語られるさいに、中国人、なかでも若者の反日意識がそれほど強くないことの証としてよく持ち出されるのが、中国の若者の日本文化、とくにアニメや漫画といったいわゆるサブカルチャーへの関心の高さです。この記事でも、日本への関心の高い若者には反日意識は感じられない、とされています。しかし、日本のサブカルチャーへの関心の高さと反日意識とがどこまで反比例するかというと、疑問の残るところです。

 アメリカ合衆国のジャズやハリウッド映画やスポーツ文化などをこよなく愛しながら、反米意識の強い人もいるでしょうし、中国の伝統文化を愛しながらも、現在の中国の在り様に批判的な人もいるでしょう。反**意識というものは、政治的性格を帯びやすく、文化、とくにいわゆるサブカルチャーへの愛好とどこまで反比例の関係にあるのか、私は懐疑的に思っています。今後、何かの契機で、日本の文化を愛好する中国の若者の多くが、反日意識を顕にするような事態が生じる可能性は、低いとは言い難いでしょう。もっとも、そもそも「反日」・「反中」とは何を対象としているのか、という問題もあるわけで、その意味でこの記事が間抜けなものになっているところが多分にあるのは否定できません。こうした問題については、機会を改めて雑感を述べることにします。

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