後藤明『海から見た日本人』
講談社選書メチエの一冊として、2010年4月に刊行されました。日本列島が主題とはなっていますし、じっさい日本列島に関する記述は他の地域よりも多いのですが、日本列島史・日本人形成史というよりは、海人に関する考察が真の主題になっているような印象を受けます。海人とは、漁民を意味するのではなく、海を生活拠点としながら、漁撈・海上交易・工芸・製塩・水先案内・海賊・水軍など、多様な生業を営む人々のことで、本書では、日本列島はもちろん、東南アジア・メラネシア・ポリネシア・ヨーロッパなどにおける、海人の事例が紹介されています。
海人とは、特定の民族的集団というよりは、共通の目標と生活様式を有する集団とされ、たとえば倭寇もその一例とされるのですが、近代以降の、今でも根強い国民国家的歴史観への見直しを迫る内容にもなっています。本書で紹介された事例のなかには興味深いものが多いのですが、ニューギニア周辺では、すでに2万年前頃に黒曜石が海を越えて長距離にわたって運搬されていた、という事実はとくに興味深いものです。これをただちに交易と解釈することには慎重でなければなりませんが、日本列島においても同様の事象がすでに3万年前頃には認められることから考えても、広範囲の人的交流が更新世の世界各地で存在した可能性は高いのだろう、と思います。
これらは今のところ現生人類(ホモ=サピエンス)以外の人類では確実な事例が認められておらず、それが現生人類の現在の繁栄と他の人類種の更新世末までの滅亡の一因になった、と考えるのが妥当なように思われます。もっとも、アフリカにおける長距離の石材の移動は、13~10万年前頃までさかのぼり、今後さらにさかのぼる可能性もありますから、おそらくその担い手は現生人類でしょうが、他の人類が担い手であった可能性も、多少は考慮しておくほうがよいかもしれません。
海人とは、特定の民族的集団というよりは、共通の目標と生活様式を有する集団とされ、たとえば倭寇もその一例とされるのですが、近代以降の、今でも根強い国民国家的歴史観への見直しを迫る内容にもなっています。本書で紹介された事例のなかには興味深いものが多いのですが、ニューギニア周辺では、すでに2万年前頃に黒曜石が海を越えて長距離にわたって運搬されていた、という事実はとくに興味深いものです。これをただちに交易と解釈することには慎重でなければなりませんが、日本列島においても同様の事象がすでに3万年前頃には認められることから考えても、広範囲の人的交流が更新世の世界各地で存在した可能性は高いのだろう、と思います。
これらは今のところ現生人類(ホモ=サピエンス)以外の人類では確実な事例が認められておらず、それが現生人類の現在の繁栄と他の人類種の更新世末までの滅亡の一因になった、と考えるのが妥当なように思われます。もっとも、アフリカにおける長距離の石材の移動は、13~10万年前頃までさかのぼり、今後さらにさかのぼる可能性もありますから、おそらくその担い手は現生人類でしょうが、他の人類が担い手であった可能性も、多少は考慮しておくほうがよいかもしれません。
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