大河ドラマ『風と雲と虹と』における主従関係
この作品は人物造形がしっかりとしており、それは主要人物だけではなく、あまり見せ場がなかったり登場回数が少なかったりする人物についても同様なのですが、それだけに、主要人物はおおむね強い個性の持ち主となっています。やはり、主要人物には一家の当主が多くなるのですが、それぞれの当主の強い個性を中和するというか、暴走しがちな当主を配下が制止しようとして、作品のバランスをとろうという構図が認められるように思います。原作は未読なので断言はできないのですが、これは脚本家による意図的な構成になっているのではないか、と思います。
主人公の平将門が、民人や友人や想いを寄せている人のために暴走することは珍しくないのですが、それを諌める役割を担っているのが、将門の第一の郎党と言うべき伊和員経で、将門の弟の将頼も同様の役割を担っています。理想や感情の故に暴走しがちな将門を、現実的な視点から制止しようとする員経・将頼という構図になるでしょう。ただ、将門が時として暴走するとはいっても、員経も将頼も将門を尊敬していることに変わりはありません。平良兼の家は妻の詮子が目立ち、第一の郎党と言うべき蓮沼五郎が目立たず、平良正の家も配下の者が目立たなかったので、割愛します。
平貞盛の第一の郎党は佗田真樹で、女性関係にだらしなく、戦から逃げ回ろうとする主人の貞盛を尊敬することができず、将門に好感を抱いているという役柄なのですが、それでも主人に忠実であろうとする真樹を、藤巻潤氏が好演しています。貞盛は、父の国香を将門軍に殺されたにも関わらず、仇討をするのではなく、将門と和解しようとする貞盛を、仇討に踏み切るよう促します。これだけを見ると、将門の側と逆に、配下が暴走して主人がそれを抑えるのに苦心している、という構図にも見えますが、坂東における確かな現実である、仇討を当然とする観念から逃げようとする貞盛を諌めるという意味で、真樹も、暴走する主人を制止しようとする配下という役割を担っていると言えるのではないか、と思います。
田原藤太(藤原秀郷)の第一の郎党は佐野八郎で、八郎は坂東の住人として将門に好意を持っており、それ以上に、勢力の盛んな将門にたいして、どうして主人の藤太が接触を避けようとするのか、不思議に思うとともに、危ぶんでもいます。現実的に考えれば、将門ともっと早くに会い、友好を深めるべきだ、ということになるのでしょうが、この作品では、将門を冷徹に値踏みしようとする藤太のほうが考えが深いといった感じで、その点が将門主従との大きな違いになっています。また、そのような器量の違いということもあるのでしょうが、八郎は藤太を心の底から畏敬しているといった感じの描写が目立ち、この「畏れ」という点でも、明るくからかい合うこともある将門主従とは対照的です。
以上は坂東武者の主従関係であり、主要な配下の者たちは、おそらく譜代に近い郎党で、先代から仕えているようですが、この作品の重要人物の一人である藤原純友の場合、海賊団の頭領とはいえ、おそらくはいたであろう先代からの配下は目立たず、志を同じくする海賊たちと主従関係を結んでいるという意味で、坂東武者とはずいぶんと異なる主従関係だと言えるでしょう。体制への義憤から反逆の道を選んだ純友も、その熱い心から時として暴走することがあるのですが、配下の者たちは、どちらかというと、純友の暴走に同調する側にいることが多いように思います。そんな中で、坂東武者の家と同じく現実的な提言をする役割を担っているのが大浦秀成で、純友も配下のなかで秀成をもっとも信用しているようです。
主人公の平将門が、民人や友人や想いを寄せている人のために暴走することは珍しくないのですが、それを諌める役割を担っているのが、将門の第一の郎党と言うべき伊和員経で、将門の弟の将頼も同様の役割を担っています。理想や感情の故に暴走しがちな将門を、現実的な視点から制止しようとする員経・将頼という構図になるでしょう。ただ、将門が時として暴走するとはいっても、員経も将頼も将門を尊敬していることに変わりはありません。平良兼の家は妻の詮子が目立ち、第一の郎党と言うべき蓮沼五郎が目立たず、平良正の家も配下の者が目立たなかったので、割愛します。
平貞盛の第一の郎党は佗田真樹で、女性関係にだらしなく、戦から逃げ回ろうとする主人の貞盛を尊敬することができず、将門に好感を抱いているという役柄なのですが、それでも主人に忠実であろうとする真樹を、藤巻潤氏が好演しています。貞盛は、父の国香を将門軍に殺されたにも関わらず、仇討をするのではなく、将門と和解しようとする貞盛を、仇討に踏み切るよう促します。これだけを見ると、将門の側と逆に、配下が暴走して主人がそれを抑えるのに苦心している、という構図にも見えますが、坂東における確かな現実である、仇討を当然とする観念から逃げようとする貞盛を諌めるという意味で、真樹も、暴走する主人を制止しようとする配下という役割を担っていると言えるのではないか、と思います。
田原藤太(藤原秀郷)の第一の郎党は佐野八郎で、八郎は坂東の住人として将門に好意を持っており、それ以上に、勢力の盛んな将門にたいして、どうして主人の藤太が接触を避けようとするのか、不思議に思うとともに、危ぶんでもいます。現実的に考えれば、将門ともっと早くに会い、友好を深めるべきだ、ということになるのでしょうが、この作品では、将門を冷徹に値踏みしようとする藤太のほうが考えが深いといった感じで、その点が将門主従との大きな違いになっています。また、そのような器量の違いということもあるのでしょうが、八郎は藤太を心の底から畏敬しているといった感じの描写が目立ち、この「畏れ」という点でも、明るくからかい合うこともある将門主従とは対照的です。
以上は坂東武者の主従関係であり、主要な配下の者たちは、おそらく譜代に近い郎党で、先代から仕えているようですが、この作品の重要人物の一人である藤原純友の場合、海賊団の頭領とはいえ、おそらくはいたであろう先代からの配下は目立たず、志を同じくする海賊たちと主従関係を結んでいるという意味で、坂東武者とはずいぶんと異なる主従関係だと言えるでしょう。体制への義憤から反逆の道を選んだ純友も、その熱い心から時として暴走することがあるのですが、配下の者たちは、どちらかというと、純友の暴走に同調する側にいることが多いように思います。そんな中で、坂東武者の家と同じく現実的な提言をする役割を担っているのが大浦秀成で、純友も配下のなかで秀成をもっとも信用しているようです。
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