ユダヤ人のゲノムと他集団との比較

 ユダヤ人の全ゲノム構造についての研究(Behar et al., 2010)が公表されました。この研究では、14のユダヤ人共同体から得られたゲノムのデータが、アフリカ・ユーラシアの69の非ユダヤ人集団のそれと比較されていますが、この69の非ユダヤ人集団のうち25集団は、この研究以前には報告されたことがありません。この比較の結果、現代のユダヤ人の大半とレヴァントの非ユダヤ人集団とが近い関係にあることが明らかになりました。この結果は、現在のユダヤ人の大半が、レヴァントにいた古代ヘブライ人およびイスラエル人の子孫である、とする歴史学の見解と整合的です。

 対照的に、エチオピアおよびインドのユダヤ人共同体は、後者とレヴァント人との父系での明確な関連にも関わらず、それぞれエチオピアおよびインド西部の隣接する非ユダヤ人集団と密接な遺伝的関係が認められました。この説明として、エチオピアやインドにユダヤ人共同体が確立されたときに、かなり大規模な遺伝的・宗教的・文化的な交差が起こった可能性が指摘されています。インドやエチオピアでは、移住してきたユダヤ人の数が少なかった、ということでもあるのかもしれません。


参考文献:
Behar DM. et al.(2010): The genome-wide structure of the Jewish people. Nature, 466, 238-242.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09103

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