360万年前頃の人類の直立二足歩行

 360万年前頃の人類の直立二足歩行についての研究(Haile-Selassie et al., 2010)が報道されました。じゅうらい、「ルーシー」としてよく知られている320万年前頃のアウストラロピテクス=アファレンシスの人類骨(A.L.288-1)を根拠として、アファレンシスは現代人よりも直立二足歩行に適していなかった、とされてきました。しかし、この研究では、2005年にエチオピアで発見された、360万年前頃のアファレンシスの骨の分析の結果、アファレンシスはじゅうらい考えられていたよりも直立二足歩行に適していた、と指摘されています。

 このアファレンシスは男性と考えられており、推定身長は1.5~1.8mとされていますから、アファレンシスとしてはひじょうに身長が高かった、ということになります。また、直立二足歩行能力の見直しとともに、木登りの能力の見直しも示唆されており、アファレンシスはまだ樹上生活に適応しており、木登りが現代人より上手かった、と考えられてきたのにたいして、アファレンシスの木登りの能力は現代人と同程度だった可能性のあることが指摘されています。

 上記報道では、この360万年前頃の人類骨は、これまで考えられてきたアファレンシスの特徴とかなり異なることから、アファレンシスではなく別種の人類ではないか、と考える研究者の見解も引用されています。その可能性は確かにあり、この60万年前頃の人類骨は、アファレンシスとは異なる別の人類種で、それが既知の種である可能性も、未知の種である可能性もあるでしょう。

 また、そもそも、これまでアファレンシスとして分類されてきた人類骨は、実は複数の種を含んでいる、という可能性もあるでしょう。この360万年前頃の人類骨は、アファレンシスではなく別種の人類で、直立二足歩行への適応から考えて、現代人の祖先だった、という可能性も考えられます。その場合、「ルーシー」に代表されるアファレンシスは、現代人の祖先ではなく、子孫が現代まで生き残ることはなかった、ということになるのでしょう。


参考文献:
Haile-Selassie Y et al.(2010): An early Australopithecus afarensis postcranium from Woranso-Mille, Ethiopia. PNAS, 107, 27, 12121-12126.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1004527107

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