アフリカをめぐる言説
今年2月に、「アフリカが発展しない理由」と題するブログの記事が話題になりました。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100207
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100207
今更ですが、NHKでアフリカを扱った特集番組が放送され、日本人のアフリカにたいする認識も変わりつつあるのではないか、と思う今、この記事について少しだけ雑感を述べることにします。
上記の「アフリカが発展しない理由」と題する記事には、多数の反論が寄せられており、たとえば、あまりにも無批判に欧米的な「近代性」原理を自明のものとして扱っている、との観点からのブログ記事もあります。
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20100208/p1
これは、「良心派からの模範的反論の一例」と言えるかもしれませんが、この記事にも違和感は拭えませんでした。それは、アフリカの現状認識への差から生じるものかもしれません。
この記事を読んだ時点での(サハラ砂漠以南の)アフリカに関する私の認識は、国家・地域・階層間の格差が大きく、治安・社会資本・汚職・エイズなどの問題が深刻ではあるものの、全体として高度経済成長期にあり、経済は発展しつつある、というものでした。
http://www.fasid.or.jp/chosa/forum/bbl/pdf/161_1.pdf
そのため、元記事とそれにたいする反応にも疑問を抱いたことを覚えています。そんななかで私が共感したのは、以前ここでも取り上げた
https://sicambre.seesaa.net/article/201003article_20.html
ブログの記事の、「なんで経済成長してないこと前提に議論が盛り上がってんの?」との指摘でした。
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20100209/1265704161
とはいっても、多くの人が指摘しているように、日本人のほとんどはアフリカにたいする知識が乏しく、私も、古人類学に関心があるので、現在のアフリカについて多くの日本人より多少知識があるかもしれないとはいえ、やはり明らかに勉強不足であることは否めず、まずはアフリカの現状について少しずつ学んでいくことが必要なのでしょう。
なお、「アフリカが発展しない理由」と題するブログの記事にたいしては、批判がほとんどだったのですが、上記のブックマークでは、たとえば“nextworker”氏の、「アフリカは人類発祥の地で、なぜ数万年前からほぼ変わらない生活様式を維持しているのか考えたほうがいい。それが彼らのDNAで我々はその突然変異に過ぎない。アフリカに文明を押し付けるのはDNAに対する侵害だよ」といった反応もありました。これが論外であることは、サハラ砂漠以南のアフリカにおける紀元前の農耕の拡大などからも明らかなのですが、こうした言説は、コイサン族を現生人類最古の系統・最古の現生人類集団と表現し、コイサン族の言語と想定される現生人類の原初の言語との類似性を指摘する見解とも、根底のところで共通していると思われます。こうした見解には根深いものがあるようで、これを覆すのは、残念ながら容易ではないのでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100207
http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/Chikirin/20100207
今更ですが、NHKでアフリカを扱った特集番組が放送され、日本人のアフリカにたいする認識も変わりつつあるのではないか、と思う今、この記事について少しだけ雑感を述べることにします。
上記の「アフリカが発展しない理由」と題する記事には、多数の反論が寄せられており、たとえば、あまりにも無批判に欧米的な「近代性」原理を自明のものとして扱っている、との観点からのブログ記事もあります。
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20100208/p1
これは、「良心派からの模範的反論の一例」と言えるかもしれませんが、この記事にも違和感は拭えませんでした。それは、アフリカの現状認識への差から生じるものかもしれません。
この記事を読んだ時点での(サハラ砂漠以南の)アフリカに関する私の認識は、国家・地域・階層間の格差が大きく、治安・社会資本・汚職・エイズなどの問題が深刻ではあるものの、全体として高度経済成長期にあり、経済は発展しつつある、というものでした。
http://www.fasid.or.jp/chosa/forum/bbl/pdf/161_1.pdf
そのため、元記事とそれにたいする反応にも疑問を抱いたことを覚えています。そんななかで私が共感したのは、以前ここでも取り上げた
https://sicambre.seesaa.net/article/201003article_20.html
ブログの記事の、「なんで経済成長してないこと前提に議論が盛り上がってんの?」との指摘でした。
http://d.hatena.ne.jp/tonmanaangler/20100209/1265704161
とはいっても、多くの人が指摘しているように、日本人のほとんどはアフリカにたいする知識が乏しく、私も、古人類学に関心があるので、現在のアフリカについて多くの日本人より多少知識があるかもしれないとはいえ、やはり明らかに勉強不足であることは否めず、まずはアフリカの現状について少しずつ学んでいくことが必要なのでしょう。
なお、「アフリカが発展しない理由」と題するブログの記事にたいしては、批判がほとんどだったのですが、上記のブックマークでは、たとえば“nextworker”氏の、「アフリカは人類発祥の地で、なぜ数万年前からほぼ変わらない生活様式を維持しているのか考えたほうがいい。それが彼らのDNAで我々はその突然変異に過ぎない。アフリカに文明を押し付けるのはDNAに対する侵害だよ」といった反応もありました。これが論外であることは、サハラ砂漠以南のアフリカにおける紀元前の農耕の拡大などからも明らかなのですが、こうした言説は、コイサン族を現生人類最古の系統・最古の現生人類集団と表現し、コイサン族の言語と想定される現生人類の原初の言語との類似性を指摘する見解とも、根底のところで共通していると思われます。こうした見解には根深いものがあるようで、これを覆すのは、残念ながら容易ではないのでしょう。
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