大河ドラマ『風と雲と虹と』第35回「豊田炎上」

 酷暑のなか、疲労が蓄積して倒れた将門は豊田の館へと運ばれ、良子が将門を看病します。目覚めた将門は起き上がろうとしますが、崩れ落ちてしまいます。将門は脚気を患ってしまったのでした。将門は良子以外には脚気を覚られないようにし、元気に家臣団に接します。将門の説得もあって、将門側には兵500が集まり、将門もその配下たちも勝利を確信します。

 承平7年(937年)8月17日、将門は豊田の近くで良兼・良正軍を迎え撃つことにしますが、脚気で足の自由がきかないことに、わずかながら不安を感じていました。良兼・良正軍には源扶と佗田真樹もいました。良兼と良正は、将門の父の良将の画像を描いた旗を掲げ、将門軍の士気をくじこうとします。良兼・良将はじわじわと攻め寄せていこうとしますが、扶は逸って将門に決戦を挑みます。将門は、父の描かれた旗に矢は射掛けられないとして、扶の挑発に応じて出撃しようとし、馬に乗ろうとしたところ、脚気のため足に力が入らず、落馬してしまいます。良兼・良正軍は勢いに乗り、一方の将門軍は一気に士気が低下し、敗走します。

 敗走途中、将門は桔梗たちと遭遇し、若い女性たちも将門のために戦おうとしていることを知ります。豊田の館へと帰還した将門を、老郎党は明るく慰め、将門も明るい様子で応じます。しかし、将門と二人きりになった老郎党は、長年住んでいた館との別れにさすがに悲しみを隠せません。良子・豊田丸・貴子たちは、桔梗たちの案内で落ち延びますが、都育ちの貴子は体力に欠けるのか、次第に遅れ始めます。将門の一行は、村の民人たちの案内で森へと身を潜めようとします。

 良兼・良正軍は豊田の館を焼き払い、良正は満足そうですが、良兼は、娘の良子が心配で、館には誰もいなかったのか、と念を入れて訊きます。扶と良正は、民人に人気のある将門が匿われているのではないかと考え、村々を徹底的に探索しようとします。良兼が良子を心配していると察した扶は、自分の妻になるはずだった良子のことは自分が捜索しよう、と言います。

 源護の娘で、良兼の妻の詮子と良正の妻の定子は、豊田の館が炎上しているのを見て満足そうです。その場には後詰となっていた貞盛もいました。貞盛は、詮子の前で将門への同情と将門が友人であることを語ります。詮子は、貞盛にとっても義理の弟となる自分の弟2人を将門は殺したのだ、と貞盛を詰りますが、貞盛は、あなたは偉い人だ、男に生まれればよかったのだ、と言って相変わらず飄々とした様子です。将門は私の父の仇でもあるが、そのことには触れず自分の弟のことにしか触れない詮子は、坂東源氏のことしか目になく、それは定子も自分の妻の小督も同じだ、と貞盛は冷ややかに言います。

 言い過ぎました、忘れてください、と言う貞盛にたいして、都の女が好きなようですね、と詮子は言います。詮子は、自分も15歳まで都にいたが、男に頼って生きていくしかない都の女は嫌いだ、と言います。詮子は、自分は夫の良兼を愛しており、豊田の炎上は愛の証だ、と陶酔したように言います。貞盛は、詮子は魅力的だと言いつつ、自分が気になるのは父の仇の将門の生死であり、将門に自分の生まれ育った館を焼き払われたときも、気にはならないのが私だ、と言います。しかし、将門は自分の館が焼き払われたことに深く傷つく男なので、豊田の館が炎上しているのは辛い、と言います。さらに貞盛は、そういう将門が妬ましい、と言います。何が言いたいのだ、と問いかける詮子にたいして、あなたは女として何かに欠けているが、それは私も同じだ、と述べ、詮子に言い寄る素振りを一瞬見せながら、立ち去ります。

 将門は、森で将頼・良子たちと落ち合います。将門が落馬した原因が脚気と分かり、ならば頑丈な将門はすぐに回復するだろう、と言って将門も将頼も良子も老郎党夫妻も明るく笑いますが、将門たちからやや離れた場所にいる貴子と侍女は沈んだ様子です。良子は貴子を自分たちの方に招き、将門らとともに慰め、将門を信じてください、と貴子に言います。しかし貴子は、信じているとは言ったものの、不安な様子を隠せません。将門たちが休んだ後も、貴子とその侍女は起きており、なんとか貞盛のところへ行けないものか、と侍女は言います。将門はその言葉を聞いていましたが、寝たふりを続けました。貴子は、将門・良子・豊田丸が寝ている姿を見ながら、将門と出会えて幸せだった、と言って涙を流します。

 良正と扶は将門の行方を追い、将門に加担しそうな村人たちを詰問します。将門に加担した者を匿った村人も同罪で、すべて死罪だ、と良正と扶は脅迫し、村を焼き払います。将門たちは良正・扶の捜索から逃れるため、女性・子供たちと男たちの二手に分かれて身を潜めようとします。良正と扶は、さらに別の村でも将門の行方を追い、焼き払うと言って村人を脅迫します。その村には、将門軍に加わった男2人がおり、彼は村長の息子でした。良正は、我々に忠義を誓うなら自らの手で2人を殺せと村長に命じ、それができなければ村人全員を殺すぞ、と脅迫します。栗麻はやむを得ず2人を殺します。栗麻役の神田正夫氏のこの時の演技は見応えがあります。

 毎回見所の多いこの作品ですが、今回は貞盛と詮子の会話が注目されます。両者の人物像を浮き彫りにし、貞盛と将門の対照性とともに、貞盛の将門への複雑な感情も描かれます。そうした人物描写が、以前のものと矛盾しておらず、一貫しており、人物造形がしっかりとなされていることがよく分かります。貞盛は久々に本格的な登場となりましたが、山口崇氏の飄々とした演技は相変わらずで、まさに適役だと思います。脚本の福田善之氏は、山口氏を念頭に置きながら貞盛の人物像を作っていたのではないか、とも思います。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック