始生代の海洋は穏やかだった

 始生代前期(約35億年前)の海水温は、じゅうらい考えられてきたよりも低かったことを論証した研究(Ruth et al., 2010)が公表されました。じゅうらい、始生代前期(約35億年前)の海水温は55~85℃と考えられてきました。しかしこの研究では、南アフリカのバーバートン緑色岩帯で得られた保存状態のよい岩石の分析から、始生代前期の海水温は40℃を超えなかっただろう、とされています。バーバートンの岩石には、35~32億年前頃の初期生命と海洋の化学的性質の地球化学的記録が保持されています。

 この岩石に保存されていたリン酸塩の酸素同位体組成の分析から、始生代の海水温は、じゅうらい考えられてきた55~85℃よりもかなり低い26~35℃であることが示された、とのことです。このことから、始生代の地球ではリン循環がよく発達し、生物活動が活発だったことが示唆されます。地球および生物史の初期については、まだあいまいなところも少なくないでしょうから、今後も、このように通説を覆すような研究が多数公表されることでしょう。初期の生物進化のありようを考察するうえでも重要な研究で、穏やかな環境のもとで、生物は繁栄し、多様性を育みつつ進化していったのではないか、と思います。


参考文献:
Blake RE, Chang SJ, and Leplandy A.(2010): Phosphate oxygen isotopic evidence for a temperate and biologically active Archaean ocean. Nature, 464, 1029-1032.
http://dx.doi.org/10.1038/nature08952

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