ホモ属の特徴をもつアウストラロピテクス属の化石
今週の『サイエンス』では、南アフリカで発見された人類化石が大きく取り上げられており、表紙にはこの人類化石が掲載されています。『ナショナルジオグラフィック』でも大きく取り上げられており、子供の頭蓋骨についての記事と、この人類が発見された洞窟についての記事と、顔の特徴についての記事と、この人類化石の系統上の位置づけについての記事と、身体的特徴についての記事と、この人類化石がホモ属の祖先か否かという議論を取り上げた記事とが掲載されています。
この30代の女性と8~13歳の男性の部分的な人類化石は、南アフリカのマラパ洞窟遺跡で発見されました。この人類化石についての研究(Berger et al., 2010)では、この人類化石はアウストラロピテクス=アフリカヌスの子孫であるアウストラロピテクス属の新種アウストラロピテクス=セディバと考えられるが、他のアウストラロピテクス属の種よりも多く、骨盤の独特な特徴と小さな歯など初期ホモ属と共通する派生的特徴を有している、と指摘されています。この人類化石が発見されたマラパ洞窟遺跡の地質学的環境と年代についての研究(Dirks et al., 2010)では、同じ洞窟から発見された剣歯虎・カッショクハイエナ・アンテロープなどの大型動物の化石と、ウラン-鉛年代測定法と、古地磁気学的年代測定から、この人類化石の年代は195~178万年前頃と推定されています。
この人類化石は身長120cm以下と推定され、ホモ属的特徴を有しながらも、脳が小さいことや手首が原始的なことや腕が長いことなどから、研究チームはアウストラロピテクス属に分類しました。ホモ属的特徴を有するアウストラロピテクス属ということで、このアウストラロピテクス=セディバは現代人も含むホモ属の祖先ではないか、と研究チームは示唆しています。しかし、セディバの年代は195~178万年前頃とされ、それ以前にホモ属とされる人類が存在していることから、この研究チームの見解に否定的な研究者もいます。私も同様の理由で、セディバは現代人の祖先ではない、と思います。
おそらく、ホモ属的特徴を有する最初期の人類は、さまざまな系統へと分岐していき、そのうちの1系統から、現代人の祖先であるホモ=エレクトス(もしくはエルガスター)が誕生したのでしょう。このセディバは、ホモ属的特徴を有する人類が登場してからわりと早い時期に、現代人の直系祖先と分岐したのではないか、と思います。200万年前以降のホモ=ハビリスは、セディバよりも後に現代人の直系祖先と分岐した系統と考えられますが、現在ハビリスと分類されている人骨は、複数の系統に分類されるようになるかもしれません。セディバやハビリスのように、ホモ属的特徴を有するものの、現代人の直系祖先とわりと早い年代に分岐した人類集団のなかに、ホモ=フロレシエンシスの祖先がいたのではないか、とも考えられます。
参考文献:
Berger LR. et al.(2010): Australopithecus sediba: A New Species of Homo-Like Australopith from South Africa. Science, 328, 5975, 195-204.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1184944
Dirks PHGM. et al.(2010): Geological Setting and Age of Australopithecus sediba from Southern Africa. Science, 328, 5975, 205-208.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1184950
この30代の女性と8~13歳の男性の部分的な人類化石は、南アフリカのマラパ洞窟遺跡で発見されました。この人類化石についての研究(Berger et al., 2010)では、この人類化石はアウストラロピテクス=アフリカヌスの子孫であるアウストラロピテクス属の新種アウストラロピテクス=セディバと考えられるが、他のアウストラロピテクス属の種よりも多く、骨盤の独特な特徴と小さな歯など初期ホモ属と共通する派生的特徴を有している、と指摘されています。この人類化石が発見されたマラパ洞窟遺跡の地質学的環境と年代についての研究(Dirks et al., 2010)では、同じ洞窟から発見された剣歯虎・カッショクハイエナ・アンテロープなどの大型動物の化石と、ウラン-鉛年代測定法と、古地磁気学的年代測定から、この人類化石の年代は195~178万年前頃と推定されています。
この人類化石は身長120cm以下と推定され、ホモ属的特徴を有しながらも、脳が小さいことや手首が原始的なことや腕が長いことなどから、研究チームはアウストラロピテクス属に分類しました。ホモ属的特徴を有するアウストラロピテクス属ということで、このアウストラロピテクス=セディバは現代人も含むホモ属の祖先ではないか、と研究チームは示唆しています。しかし、セディバの年代は195~178万年前頃とされ、それ以前にホモ属とされる人類が存在していることから、この研究チームの見解に否定的な研究者もいます。私も同様の理由で、セディバは現代人の祖先ではない、と思います。
おそらく、ホモ属的特徴を有する最初期の人類は、さまざまな系統へと分岐していき、そのうちの1系統から、現代人の祖先であるホモ=エレクトス(もしくはエルガスター)が誕生したのでしょう。このセディバは、ホモ属的特徴を有する人類が登場してからわりと早い時期に、現代人の直系祖先と分岐したのではないか、と思います。200万年前以降のホモ=ハビリスは、セディバよりも後に現代人の直系祖先と分岐した系統と考えられますが、現在ハビリスと分類されている人骨は、複数の系統に分類されるようになるかもしれません。セディバやハビリスのように、ホモ属的特徴を有するものの、現代人の直系祖先とわりと早い年代に分岐した人類集団のなかに、ホモ=フロレシエンシスの祖先がいたのではないか、とも考えられます。
参考文献:
Berger LR. et al.(2010): Australopithecus sediba: A New Species of Homo-Like Australopith from South Africa. Science, 328, 5975, 195-204.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1184944
Dirks PHGM. et al.(2010): Geological Setting and Age of Australopithecus sediba from Southern Africa. Science, 328, 5975, 205-208.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1184950
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