水蒸気と地球温暖化の関係

 水蒸気と地球温暖化の関係についての研究(Solomon et al., 2010)が公表されました。水蒸気は強力な温室効果ガスで、太陽光を一旦吸収し、大気中に熱を再放出します。この研究では、データとモデルが併用され、2000年頃の成層圏の水蒸気濃度の低下が、2000~2009年頃の地球の平均地表温度に影響を及ぼしたことが示されました。とくに、下部成層圏水蒸気は、2000年以降の地球の平均気温を横ばいにしている重大要因であり、温度上昇を約25%減速するように作用していると考えられる、とのことです。

 またこの研究では、1980~2000年に成層圏の水蒸気量が増加し、この時期に温暖化が急加速していることも指摘されています。成層圏の水蒸気濃度が最近低下した理由はいぜんとして不明なのですが、この研究結果は、成層圏の水蒸気濃度が地球の気候にとってたいへん重要であることを示唆している、と言えます。地球温暖化にはさまざまな事象が関係していると考えられ、二酸化炭素排出量の削減に重点の置かれた近年の報道は、偏向しているように思えてなりません。


参考文献:
Solomon S. et al.(2010): Contributions of Stratospheric Water Vapor to Decadal Changes in the Rate of Global Warming. Science, 327, 5970, 1219-1223.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1182488

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