小惑星の衝突による白亜紀末期の大量絶滅

 生物史上、何度か大量絶滅があったことが知られていますが、そのなかでも白亜紀末期の大量絶滅は、大型の恐竜が絶滅したこともあって、とくによく知られています。大型恐竜の絶滅要因についてはさまざまな仮説が提唱されてきましたが、1980年代に隕石もしくは小惑星の衝突が要因との仮説が提示されてからは、日本ではテレビや一般向け科学雑誌などでよく取り上げられたこともあって、非専門家の間では、隕石・小惑星衝突説がほぼ定説として浸透しているように思われます。しかし、隕石・小惑星衝突説を大量絶滅の主因とする説への疑問はその後も提示され続けており、必ずしも確定した説とは言えなかったようです。

 ところが、さまざまなマスコミでも報道された、今週の『サイエンス』に掲載された論文(Schulte et al., 2010)では、地質学的証拠が総合的に論じられ、現在のメキシコのチクシュルーブで起きた1回の小惑星衝突が、大量絶滅の原因である、と結論づけられています。この小惑星の衝突を示す巨大クレーターの形成時期と大量絶滅の時期が一致していることが、明らかになったためだ、ということです。この衝突により、衝突地点付近ではマグニチュード11以上と推定される地震などの地球全体に破壊的な衝撃波と、大きな熱パルスおよび約300メートルの津波が瞬く間に発生した可能性がある、と指摘されています。さらに、塵やガスなどが大量に放出されたこと起因する、地球表面の冷却・光量の減少・海洋の酸性化が起こり、それらに依存している光合成植物などの種を滅ぼしたと考えられる、とも指摘されています。


参考文献:
Schulte P. et al.(2010): The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary. Science, 327, 5970, 1214-1218.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1177265

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