大河ドラマ『風と雲と虹と』第30回「遊女姫みこ」
承平6年(936年)10月、一族や源家との争いの件で裁きを受けることになった将門は、ふたたび上京するために、家族・郎党に見送られて豊田から出立します。その様子を、弟を将門に殺されて以来将門を仇と付け狙っている季重が見ていました。そこへ鹿島玄道が現れ、二人は、将門の表情が明るいのは自信をつけたからではないか、と語り合います。季重は将門を認め始めており、弟も将門ほどの人物に討たれたのならば成仏するかもしれない、と言います。
その頃、純友配下の海賊たちは日振島に集結していましたが、内部では諍いが生じていました。常日頃から名族出身であることを誇りにしている紀秋成にたいして、今は同じ海賊だとして鮫は不快感を抱いていました。それがついに爆発し、紀秋成と鮫は刀を抜いて斬り合いを始めますが、その場は螻蛄婆の仲裁でなんとか収まります。そんな様子を部屋で感じ取っていた純友ですが、動じた様子は見せません。純友配下のくらげ丸は、我々を恐れて都への貢物を運ぶ船が通らず、獲物が少ないからだ、と言います。こればかりはどうしようもない、と言う純友にたいして、配下の大浦秀成は、高麗へ出掛けてはどうだろう、と進言します。
そこへ螻蛄婆と玄明が現れ、九州・長門の貢物を積んだ船団が護衛船をしたがえて都へと向かう、という情報を純友に知らせます。玄明は、純友配下の藤原恒利から策を授かってきていました。これで内部の危機はとりあえず去った、と純友は安堵します。純友は、今回は失敗が許されない、必ず成功しなければならない、と配下たちに命じます。都へと向かう船団は、備後沖で海賊らしき船を見つけ、矢を射掛けて海賊たちを追い払います。その船には、女性と老人が乗っており、海賊たちに拉致されたのだと考えた護衛船の大将たちは、彼女らを保護します。ところが、その老人は恒利で、女性たちとは、螻蛄婆・千載・美濃でした。これが恒利の策だった、というわけです。
その日の夕暮れ、護衛船の大将の旗艦は恒利ら海賊たちに乗っ取られ、純友らのいる島へと向かい、他の船もそれに続き、純友たちは難なく貢物を奪い取ります。純友は、一部を共有財産にする他は、皆に行き渡るようすべて分配せよ、と秀成に命じます。しかし恒利は、島の留守居役の者たちにも分配することに納得がいかず、純友に不満を述べ立てます。しかし純友は、自分は財物よりもっと大きな形のないものが欲しいのだと述べ、お前も欲しくはないか、と言って恒利を心服させます。純友は、玄明とともに都に出掛けて様子を探ろうとします。
将門は11月初めに都に到着しました。以前借りていた館が、その後借り手がおらずに空き家となっていたので、将門一行は以前の館に逗留することにします。将門は、以前仕えていた藤原忠平の屋敷である小一条院へと向かいますが、その途中、貴子の屋敷の前を通ることになります。貴子の屋敷が近づくにつれて、心がときめく将門でしたが、そんな自分に苦笑するくらいの余裕もありました。将門は貴子の屋敷に着くと、そこが火事で焼けてしまっていることを知ります。
そこへ佗田真樹が現れ、今は亡き国香の名代として裁きのために上京したのだ、と将門と伊和員経に説明します。真樹は将門を先君の仇としているのですが、将門も真樹も以前からずっと互いに好意を抱いており、相手を心から相手を憎んでいるわけではなく、心ならずも敵味方になっているだけに、裁きという大義名分のある今は戦いを始めようとはしません。そうした心情を、両者ともによく演じていると思います。将門は、貴子の消息を尋ねますが、真樹も知りませんでした。真樹は、貴子に会え、との貞盛の命を受けて貴子の屋敷を訪ねてきたわけで、貞盛も貴子の消息を知らなかったというわけです。かつて、貴子を不幸にしてくれるな、と貞盛に言った将門は、憤りの混じった複雑な感情を覚え、一瞬貴子の幻影を見てしまいます。
小一条院に着いた将門は、中へ入ろうとしたところ門番から制止されますが、以前仕えていた平将門だと名乗ると、門番たちの態度が一変し、将門は中へと入ります。将門のことを知っている小一条院の家人たちは、立派になったと言って将門を歓迎します。そのなかには、上田忠好氏演じる役名のない家人もいました。将門は進物を携え、小一条院の家司である藤原子高を訪ねます。子高は将門からの進物に礼を言い、裁きについては、将門に非があるとは思えないが、遠国のことなので流言蜚語が飛び交い、将門に公への異心があるのではないか、との意見もある、と将門に語ります。忠平はどう言っているのだ、と将門が尋ねると、それはお目通りがかなった時に、と子高は答えます。いつお目通りがかなうのか、と将門が尋ねると、忠平は多忙であり、以前仕えていた将門には分かるだろうし、ちょくちょく小一条院に顔を出すとよいだろう、と子高は意味ありげに言います。以前忠平に仕えていた将門には、それが進物を持ってこいという意味だな、と理解します。都での経験から、将門が少なからぬことを学んで成長したことがうかがえる描写になっており、話の流れに無理がありません。これは、長丁場となる大河ドラマでは基本となることですが、それが出来ていないように思われる作品もあるのが残念です。
館に戻った将門は、真樹と源護が将門の進物を調べたうえで、その倍となる鞍を置いた馬を10頭献上した、と員経から聞きます。員経は、忠平への進物を増やさねば、と言いますが、そうすれば相手はまたその倍の進物を用意するだろう、と将門言います。将門は、馬鹿げていると言いますが、裁きに勝つためにはその馬鹿げた戦いを続けねばならない、と員経は将門を諌めます。裁きとは、恥知らずに貪欲な朝廷の高官たちを肥え太らせるだけではないか、と将門は思い、白蟻どもめ、との純友の口癖をつい呟いてしまいます。
員経は話題を変え、貴子の屋敷が今年の春に焼け、貴子の消息がその後分からず、貞盛が坂東に帰国した後は生活も苦しかったようだ、と将門に知らせます。それを聞いた将門は、員経を連れず一人で貴子の屋敷へと向かいます。そこへ玄明が現れ、将門は玄明から貴子の居場所を教えられます。将門は、貴子に会うのが恐ろしく、貴子に会ってはならないと考え、自分が借りている屋敷へと戻ろうとします。そこへ盗賊らしき一団が現れ、将門に襲い掛かりますが、さすがに将門は強く、あっさりと退けます。
そこへ第13回
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以来久々に興世王が現れ、将門を誉めるとともに、さきほどの盗賊らしき一団は、将門が先年討った高貴な身分の子弟たちからなる盗賊団の仲間ではないだろうか、と語ります。興世王はさらに、それは表向きのことで、将門の坂東での活躍を快く思わない貴族たちが関与しているのではないか、と示唆します。相変わらず興世王は怪しい雰囲気を漂わせており、薬物売買に関与し後に脳に障害を追った心の純粋な人物や、頑固な職人まで演じる米倉斉加年氏の役柄の広さには、本当に感心します。
盗賊らしき一団との戦いで気が立っていた将門は、一度は行くのをためらった、貴子がいるらしい館へと向かいます。将門は、そこが遊女宿だと気づきます。こんなところに貴子がいるはずないだろう、というような様子でやや不機嫌な将門ですが、しばらく経つと、昔聞きなれた声の遊女が部屋に入ってきます。暗いのは嫌い、と言って灯りをつけふりかえったその遊女は、まぎれもなく貴子でした。将門と貴子は互いに驚愕し、貴子は泣き崩れます。今回も見逃すのが惜しい場面ばかりでしたが、最後にわずかな時間しか描かれなかったとはいえ、やはり将門と貴子の再会が最大の見所でした。将門と貴子の心境が次回でどのように描かれるのか、注目しています。
その頃、純友配下の海賊たちは日振島に集結していましたが、内部では諍いが生じていました。常日頃から名族出身であることを誇りにしている紀秋成にたいして、今は同じ海賊だとして鮫は不快感を抱いていました。それがついに爆発し、紀秋成と鮫は刀を抜いて斬り合いを始めますが、その場は螻蛄婆の仲裁でなんとか収まります。そんな様子を部屋で感じ取っていた純友ですが、動じた様子は見せません。純友配下のくらげ丸は、我々を恐れて都への貢物を運ぶ船が通らず、獲物が少ないからだ、と言います。こればかりはどうしようもない、と言う純友にたいして、配下の大浦秀成は、高麗へ出掛けてはどうだろう、と進言します。
そこへ螻蛄婆と玄明が現れ、九州・長門の貢物を積んだ船団が護衛船をしたがえて都へと向かう、という情報を純友に知らせます。玄明は、純友配下の藤原恒利から策を授かってきていました。これで内部の危機はとりあえず去った、と純友は安堵します。純友は、今回は失敗が許されない、必ず成功しなければならない、と配下たちに命じます。都へと向かう船団は、備後沖で海賊らしき船を見つけ、矢を射掛けて海賊たちを追い払います。その船には、女性と老人が乗っており、海賊たちに拉致されたのだと考えた護衛船の大将たちは、彼女らを保護します。ところが、その老人は恒利で、女性たちとは、螻蛄婆・千載・美濃でした。これが恒利の策だった、というわけです。
その日の夕暮れ、護衛船の大将の旗艦は恒利ら海賊たちに乗っ取られ、純友らのいる島へと向かい、他の船もそれに続き、純友たちは難なく貢物を奪い取ります。純友は、一部を共有財産にする他は、皆に行き渡るようすべて分配せよ、と秀成に命じます。しかし恒利は、島の留守居役の者たちにも分配することに納得がいかず、純友に不満を述べ立てます。しかし純友は、自分は財物よりもっと大きな形のないものが欲しいのだと述べ、お前も欲しくはないか、と言って恒利を心服させます。純友は、玄明とともに都に出掛けて様子を探ろうとします。
将門は11月初めに都に到着しました。以前借りていた館が、その後借り手がおらずに空き家となっていたので、将門一行は以前の館に逗留することにします。将門は、以前仕えていた藤原忠平の屋敷である小一条院へと向かいますが、その途中、貴子の屋敷の前を通ることになります。貴子の屋敷が近づくにつれて、心がときめく将門でしたが、そんな自分に苦笑するくらいの余裕もありました。将門は貴子の屋敷に着くと、そこが火事で焼けてしまっていることを知ります。
そこへ佗田真樹が現れ、今は亡き国香の名代として裁きのために上京したのだ、と将門と伊和員経に説明します。真樹は将門を先君の仇としているのですが、将門も真樹も以前からずっと互いに好意を抱いており、相手を心から相手を憎んでいるわけではなく、心ならずも敵味方になっているだけに、裁きという大義名分のある今は戦いを始めようとはしません。そうした心情を、両者ともによく演じていると思います。将門は、貴子の消息を尋ねますが、真樹も知りませんでした。真樹は、貴子に会え、との貞盛の命を受けて貴子の屋敷を訪ねてきたわけで、貞盛も貴子の消息を知らなかったというわけです。かつて、貴子を不幸にしてくれるな、と貞盛に言った将門は、憤りの混じった複雑な感情を覚え、一瞬貴子の幻影を見てしまいます。
小一条院に着いた将門は、中へ入ろうとしたところ門番から制止されますが、以前仕えていた平将門だと名乗ると、門番たちの態度が一変し、将門は中へと入ります。将門のことを知っている小一条院の家人たちは、立派になったと言って将門を歓迎します。そのなかには、上田忠好氏演じる役名のない家人もいました。将門は進物を携え、小一条院の家司である藤原子高を訪ねます。子高は将門からの進物に礼を言い、裁きについては、将門に非があるとは思えないが、遠国のことなので流言蜚語が飛び交い、将門に公への異心があるのではないか、との意見もある、と将門に語ります。忠平はどう言っているのだ、と将門が尋ねると、それはお目通りがかなった時に、と子高は答えます。いつお目通りがかなうのか、と将門が尋ねると、忠平は多忙であり、以前仕えていた将門には分かるだろうし、ちょくちょく小一条院に顔を出すとよいだろう、と子高は意味ありげに言います。以前忠平に仕えていた将門には、それが進物を持ってこいという意味だな、と理解します。都での経験から、将門が少なからぬことを学んで成長したことがうかがえる描写になっており、話の流れに無理がありません。これは、長丁場となる大河ドラマでは基本となることですが、それが出来ていないように思われる作品もあるのが残念です。
館に戻った将門は、真樹と源護が将門の進物を調べたうえで、その倍となる鞍を置いた馬を10頭献上した、と員経から聞きます。員経は、忠平への進物を増やさねば、と言いますが、そうすれば相手はまたその倍の進物を用意するだろう、と将門言います。将門は、馬鹿げていると言いますが、裁きに勝つためにはその馬鹿げた戦いを続けねばならない、と員経は将門を諌めます。裁きとは、恥知らずに貪欲な朝廷の高官たちを肥え太らせるだけではないか、と将門は思い、白蟻どもめ、との純友の口癖をつい呟いてしまいます。
員経は話題を変え、貴子の屋敷が今年の春に焼け、貴子の消息がその後分からず、貞盛が坂東に帰国した後は生活も苦しかったようだ、と将門に知らせます。それを聞いた将門は、員経を連れず一人で貴子の屋敷へと向かいます。そこへ玄明が現れ、将門は玄明から貴子の居場所を教えられます。将門は、貴子に会うのが恐ろしく、貴子に会ってはならないと考え、自分が借りている屋敷へと戻ろうとします。そこへ盗賊らしき一団が現れ、将門に襲い掛かりますが、さすがに将門は強く、あっさりと退けます。
そこへ第13回
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_10.html
以来久々に興世王が現れ、将門を誉めるとともに、さきほどの盗賊らしき一団は、将門が先年討った高貴な身分の子弟たちからなる盗賊団の仲間ではないだろうか、と語ります。興世王はさらに、それは表向きのことで、将門の坂東での活躍を快く思わない貴族たちが関与しているのではないか、と示唆します。相変わらず興世王は怪しい雰囲気を漂わせており、薬物売買に関与し後に脳に障害を追った心の純粋な人物や、頑固な職人まで演じる米倉斉加年氏の役柄の広さには、本当に感心します。
盗賊らしき一団との戦いで気が立っていた将門は、一度は行くのをためらった、貴子がいるらしい館へと向かいます。将門は、そこが遊女宿だと気づきます。こんなところに貴子がいるはずないだろう、というような様子でやや不機嫌な将門ですが、しばらく経つと、昔聞きなれた声の遊女が部屋に入ってきます。暗いのは嫌い、と言って灯りをつけふりかえったその遊女は、まぎれもなく貴子でした。将門と貴子は互いに驚愕し、貴子は泣き崩れます。今回も見逃すのが惜しい場面ばかりでしたが、最後にわずかな時間しか描かれなかったとはいえ、やはり将門と貴子の再会が最大の見所でした。将門と貴子の心境が次回でどのように描かれるのか、注目しています。
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