中期更新世の東南アジアの人類

 中期更新世の東南アジア大陸部の人類について、これまでの研究を概観した論文(Marwick., 2009)が公表されました。この論文でまず指摘されているのは、中期更新世の東南アジア大陸部における人類の痕跡がきわめて少ないことです。これは、インド・中国南部・インドネシア(東南アジア島嶼部)という東南アジア大陸部の周辺地域と比較すると、顕著だと言えます。それでも更新世中期の東南アジア大陸部が注目されるのは、中国とインドネシアのジャワ島という、2つの異なる中期更新世の人類集団のいる地域の中間地帯に、東南アジア大陸部が位置しているからです。

 この論文では、乏しく分散した中期更新世の東南アジア大陸部の証拠を基に、東南アジア大陸部への人類の主要な移動経路として、3つのモデルが検証されます。第1のモデルは、東南アジア大陸部への人類の移動の主要な移動経路として、チャオプラヤー川流域が想定されます。第2のモデルでは、中国から東ベトナムを経由して東南アジア大陸部へと移動した、と想定されます。第3の代モデルでは、南アジアとミャンマーの海岸に沿って、人類が西方から東南アジア大陸部へと移動した、と想定されます。しかしながら、現在までの証拠を検証すると、どのモデルも強く支持されるわけではなく、今後も各仮説の検証を継続することが必要だ、と指摘されています。


参考文献:
Marwick B.(2009): Biogeography of Middle Pleistocene hominins in mainland Southeast Asia: A review of current evidence. Quaternary International, 202, 1-2, 51-58.
http://dx.doi.org/10.1016/j.quaint.2008.01.012

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