フロレシエンシスの脳の小ささの説明
霊長目の脳容量の進化と、フロレシエンシスの小さな脳についての研究(Montgomery et al., 2010)が報道されました。この研究では、37の現生霊長目と23の絶滅霊長目の、絶対的および相対的脳容量と身体のサイズが分析されました。その結果が示しているのは、霊長目の進化史において、絶対的および相対的脳容量の増加は霊長目の進化の初期においてすでに始まっており、すべての主要な霊長目生物群において、時間が経過するにつれて脳容量の増大する傾向が認められることです。これは、じゅうらいの一般的な見解を支持するものです。一方、身体のサイズについては、そうした傾向は顕著には認められませんでした。これが示唆しているのは、脳容量と身体のサイズは、それぞれ異なる選択圧を受けているだろう、ということです。
しかしながら、霊長目の系統のなかには、キヌザルやネズミキツネザルのように、その進化史において脳容量が減少した例も認められます。そうしたことからこの研究では、霊長目の進化史において、脳容量を増大させるような選択圧がおもに働き続けてきたものの、一部の系統ではその逆が生じた、とされています。脳の小さなホモ=フロレシエンシスについては、その脳の小ささを説明できないとして、病変の現生人類(ホモ=サピエンス)ではないか、とする見解もあります。しかしながらこの研究では、フロレシエンシスの脳の小ささは霊長目の進化史においてあり得ることであり、島嶼化というフローレス島への適応の結果ではないか、とされています。
ただし、その場合、フロレシエンシスは「平均的な」ホモ=エレクトスの子孫なのではなく、ドマニシ人(原始的特徴の見られるホモ属で、ハビリスかエルガステルもしくはエレクトスなのか、それとも新たにグルジカスという種区分を設定すべきなのか、議論が続いています)やホモ=ハビリス(もしくはアウストラロピテクス=ハビリス)の子孫であると仮定するのが、この研究で示されたデータと整合的だ、とされています。フロレシエンシスについての最近の研究では、最初の頃に言われていたエレクトスの島嶼化の結果としてではなく、エレクトスよりも原始的な人類から進化したのではないか、との見解が有力になりつつあります。この研究も、そうした見解と整合的と言えるでしょう。
参考文献:
Montgomery SH. et al.(2010): Reconstructing the ups and downs of primate brain evolution: implications for adaptive hypotheses and Homo floresiensis. BMC Biology, 8:9.
http://dx.doi.org/10.1186/1741-7007-8-9
しかしながら、霊長目の系統のなかには、キヌザルやネズミキツネザルのように、その進化史において脳容量が減少した例も認められます。そうしたことからこの研究では、霊長目の進化史において、脳容量を増大させるような選択圧がおもに働き続けてきたものの、一部の系統ではその逆が生じた、とされています。脳の小さなホモ=フロレシエンシスについては、その脳の小ささを説明できないとして、病変の現生人類(ホモ=サピエンス)ではないか、とする見解もあります。しかしながらこの研究では、フロレシエンシスの脳の小ささは霊長目の進化史においてあり得ることであり、島嶼化というフローレス島への適応の結果ではないか、とされています。
ただし、その場合、フロレシエンシスは「平均的な」ホモ=エレクトスの子孫なのではなく、ドマニシ人(原始的特徴の見られるホモ属で、ハビリスかエルガステルもしくはエレクトスなのか、それとも新たにグルジカスという種区分を設定すべきなのか、議論が続いています)やホモ=ハビリス(もしくはアウストラロピテクス=ハビリス)の子孫であると仮定するのが、この研究で示されたデータと整合的だ、とされています。フロレシエンシスについての最近の研究では、最初の頃に言われていたエレクトスの島嶼化の結果としてではなく、エレクトスよりも原始的な人類から進化したのではないか、との見解が有力になりつつあります。この研究も、そうした見解と整合的と言えるでしょう。
参考文献:
Montgomery SH. et al.(2010): Reconstructing the ups and downs of primate brain evolution: implications for adaptive hypotheses and Homo floresiensis. BMC Biology, 8:9.
http://dx.doi.org/10.1186/1741-7007-8-9
この記事へのコメント
以前の記事もなかなか読み進められず、ようやく海部先生の記事(現代人の起源)をネットで読んだくらいで立ち止まっています
フロレシエンスも今後とも注目ですね。
ちょっと思ったのが、進化には境界線などなく、過渡的なものは山ほどいそうなので、そんなに「どっちか」に分けることにこだわらなくても・・・と思ってしまいました。
「ホモ」と「アウストラロピテクス」の間の分化途上の種・・・って分類はダメなんですかね?(笑)「アウストラロ=ホモ=ハビリス」とか。
「分化途上の種」という証明も必要か(笑)そこに文句付けられたら決まりませんね(笑)
素人考えでちょっと思いました m(_ _)m
ハビリスは、「ホモ」と「アウストラロピテクス」の間の分化途上の種というか、ホモ属というにはアウストラロピテクス属的な特徴が認められるけど、アウストラロピテクス属というにはホモ属的特徴が認められるという骨を都合よく分類できる区分といったところがありますね。
現在、ハビリスとして分類されている人骨群が、本当に一つの集団として認められるものなのか、今後さらに検証が必要になるでしょう。