4000年前の人類の核ゲノムの塩基配列

 グリーンランドで発見された、エスキモーの男性の毛髪から採取された核ゲノムの塩基配列についての研究(Rasmussen et al., 2010)が報道されました。この研究での塩基配列解読により、二倍体ゲノムの79%が復元され、一塩基多型が353151個発見されました。この一塩基多型の分析により、この男性の表現型の特徴が推定されました。また、この一塩基多型を現代人集団のそれと比較したところ、この男性ときわめて近い関係にある複数の集団が、シベリア東部や中部で見つかりました。

 この4000年前の男性は、サカク文化に属していました。サカク文化は、グリーンランドに定着したことが知られている最古の文化です。サカク文化に属していたこの4000年前の男性が、遺伝的には、現代のアメリカ大陸先住民系集団よりも、シベリアの集団にずっと近いことから、現在のアメリカ大陸先住民およびエスキモーの祖先集団とは別の集団が、かつてシベリアからアメリカ大陸へと移住したのではないか、とこの研究では指摘されています。おそらく、この4000年前の男性が属していた集団は、ほとんどまったく現代へと遺伝子を伝えていないのでしょう。


参考文献:
Rasmussen M. et al.(2010): Ancient human genome sequence of an extinct Palaeo-Eskimo. Nature, 463, 757-762.
http://dx.doi.org/10.1038/nature08835

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