脊椎動物の起源

 脊椎動物の起源についての研究(Niedźwiedzki et al., 2010)が報道されました。この研究では、ポーランドの採石場で発見された陸生脊椎動物(四肢動物)の足跡化石について報告されています。この中には、保存状態が極めて良好で足部の形態の詳細な検討が可能なものがあり、初期の原始的な四肢動物であるイクチオステガ(Ichthyostega)と類似していることが判明しました。この足跡化石が注目されるのは、3億9500万年前という年代です。これは、じゅうらい最古の四肢動物化石の年代とされてきた3億7700万年前より1800万年古く、ティクタアリク(Tiktaalik)やパンデリクティス(Panderichthys)などの最古のエルピストステゲ類と比較しても1000万年古くなります。これにより、エルピストステゲ類は魚類から陸上動物への移行型ではなく、むしろ遅い時期に生き残っていた中間型の名残と考えられ、現時点では、陸生脊椎動物の初期の歴史に関する知識の不足がはっきりした、と指摘されています。

 この足跡を残した生物は、海の浅瀬(潮間帯)に生息していたと考えられ、足跡のサイズや特徴は様々で、連続した足跡から、四本足で左右に体をくねらせてはうように歩いた、と考えられています。そうしたことから、潮間帯への進出が上陸につながったとの仮説も提示されています。国立科学博物館の真鍋真研究主幹は、「今回の発見でこの地層の時代に四足動物がすでに多様化していた可能性が高いと推測できる。ただ、四足動物の最初の上陸がこの発見場所で起こったとは言い切れない。さらに古い地層や、すでに見つかっている他の足跡化石を精査する必要がある」と指摘しています。水中から陸上への動物の進出については、依然として未解明のことが多いようで、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Niedźwiedzki G. et al.(2010): Tetrapod trackways from the early Middle Devonian period of Poland. Nature, 463, 43-48.
http://dx.doi.org/10.1038/nature08623

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