ヨーロッパ最古の人類?

 フランス南部で発見された前期更新世の石器についての研究(Crochet et al., 2009)が公表されました。この研究では、フランス南部の採石場で発見された化石・石器について報告されています。脊椎動物の多数の化石は約20の分類群にまとめられ、30個ほどの石器も見つけられました。これらの石器は礫器と分類されており、化石と石器の年代は157万年前頃と推定されています。ほぼ確実な人類の痕跡としては、ヨーロッパ最古級の事例となりそうで、脊椎動物の骨も見つかっていることから、当時の南ヨーロッパの生態系を探る重要な手がかりになりそうだという意味でも、ひじょうに貴重な発見と言えそうです。

 興味深いのは、発見された石器が5段階(最近ではこの区分は廃れているのかもしれませんが)のうち第1段階(オルドヴァン)に相当するということで、アシューリアン(アシュール文化)の第2段階ではなさそうだ、ということです。アシューリアンの始まりがいつなのか、微妙なところではありますが、多少古く見て170万年前頃だとすると、157万年前頃には、まだアシューリアンはアフリカに留まっており、ヨーロッパには到達していなかったのでしょうか。157万年前頃との年代が確かだとすると、ヨーロッパに最初期に移住した人類は、アシューリアンよりも前のオルドヴァン(オルドヴァイ文化)を携えて西アジアに進出した人類の子孫なのかもしれません。


参考文献:
Crochet J. et al.(2009): A new vertebrate fauna associated with lithic artefacts from the Early Pleistocene of the Hérault Valley (southern France) dated around 1.57 Ma. Comptes Rendus Palevol, 8, 8, 725-736.
http://dx.doi.org/10.1016/j.crpv.2009.06.004

この記事へのコメント

kuroneko
2010年01月13日 23:17
ネアンデルタールの貝殻の装飾品の記事が出ましたよ。朝日新聞、時事通信などで、掲載はPNASです。考古学者はネアンデルタールが、おりこうじゃない、と思ってるようです。

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