大河ドラマ『風と雲と虹と』第24回「川曲の戦い」
久々に坂東に帰ってきた貞盛は、父国香の仇討合戦を将門に仕掛けるのだろう、と坂東の人々は考えていました。将門は、貞盛の帰国だけではなく、国香と結んで将門を騙まし討ちにしようとした源国香や、土地問題で将門と対立した叔父の良正が、結託して何か動きを起こそうとしているらしい、と三宅清忠や配下の伊和員経から聞きます。そこへ弟の将頼(三郎)が現れ、貞盛を討ちに行かせてくれ、と将門に頼みます。しかし将門は、少人数で帰国した貞盛は自分を信頼しているのだから、それを裏切ることはできない、と言って将頼の進言を退けます。
それでも将頼は、戦に情けは無用だ、と言って貞盛を討つことに固執します。貞盛は頭の良い優れた人物であり、この好機を逃せば後に災いになる、と将頼は考えています。将頼は将門と同じく、弟の正平(四郎)とは異なり学はありませんが、なかなか鋭いところがあります。将門が貞盛のことを想っているほど、貞盛は将門のことを想っているだろうか、と将頼は将門に問いかけます。しかし将門は、貞盛が卑怯な手を使うのならそれは貞盛の恥であって自分の恥ではなく、自分は貞盛と戦うことになるとしても、堂々と戦いたいのだ、と言って将頼の進言をけっきょく受け入れませんでした。これまでの人物造形に沿った将門の発言であり、無理のない話の展開になっています。
一方、武蔵を抜けて常陸へと向かう途中の貞盛一行ですが、今では貞盛の家臣となった佗田真樹は、将門側が自分たちを討ち取ろうとしたら容易なことだったのに、そうはならなかった、と指摘します。これにたいして貞盛は、将門は少人数の自分たちを襲撃するような人物ではない、と確信をもって高笑いします。対照的な将門と貞盛ですが、やはり付き合いが長いだけあって、貞盛は将門のことをよく理解しています。自邸に帰還した貞盛は、都からの帰国にあたって自分に同行してきた弟の繁盛とともに、母の秀子と面会します。繁盛は将門への憎悪を露にし、復讐を誓います。秀子は、貞盛の妻の小督(源護の三女)を迎えよう、と言います。小督は、貞盛が不在の間は実家の源家にいたのでした。
貞盛は、どうせ明日には源家を訪れねばならないのだから、わざわざ迎えることはない、と言い、母と二人きりで話したいからと言って、繁盛を退出させます。母と二人きりになった貞盛は、将門と和議を結ぶつもりだ、と言います。貞盛は、これ以上恨みを重ねて何になろうと言い、秀子も同意しますが、秀子は、家臣たちも貞盛が仇討に立ち上がると期待しており、将門との和議は難しいだろうし、源家との関係もある、と懸念します。しかし貞盛は、源家と当家は異なるのであり、母が賛同するなら、自分は将門との和議を進めるつもりだ、と力強く宣言し、源家を訪れる前に将門と会う決心をします。
貞盛が一人で将門に会いに行こうとしたところ、随行する、と真樹が言い出しますが、貞盛は許しません。貞盛は、都で面識のあった菅原景行の仲立ちで、将門と面会しようとします。景行は自身で直接開墾を行っており、粗末な身なりで貞盛を出迎えたため、貞盛は驚きます。しかし景行は、都での生活よりも安らかな気持ちだ、と楽しげに語ります。景行は貞盛の意を汲んで将門を連れてきて、貞盛は将門と対面し、率直に嬉しさを表します。自分を恨んでいるだろうな、と言う将門にたいして、中で話をしよう、と貞盛は言い、景行・清忠も交えて将門と貞盛の会談が始まります。
貞盛は、貴子もその乳母も元気だ、西国へ海賊追捕使が再度派遣されることになったが、坂東武者だけで構成されており、これには将門の武勇が大きく影響しているのだろう、と都での様子を将門に語ります。将門は、なぜ自分が憎いと言わないのだ、と興奮しますが、貞盛は将門を制します。自分が悪かった、と言う将門にたいして、自分の方こそ悪かったのだ、と貞盛は言います。互いに相手のことを憎みたくない将門と貞盛は、二人の間のわだかまりをすべて水に流し、国香が押領した土地はすべて貞盛のものとしたうえで、将門が管理する、と決められました。貞盛と将門は、また会おう、と言って笑顔で別れます。
一方貞盛の館では、貞盛が源家を訪れずに行方不明となったことで大騒ぎになっていましたが、貞盛が戻ってきて、将門との間で無事に話が解決した、と聞いた秀子は安堵します。そこへ、貞盛の叔父でもある平良正も源家を訪れている、と繁盛が知らせに来ます。貞盛が源家を訪れると、良正は源護と酒を酌み交わしており、将門に敗れ、息子二人を失った護は、すっかりうちひしがれていました。そこへ小督も現れ、貞盛は久々に妻と対面します。うちひしがれた護とは対照的に、良正は将門を討とうと興奮した様子ですが、将門を騙まし討ちにしようとしたことから坂東での我々の評判はよくなく、すぐに将門を討つわけにはいかない、との貞盛の発言に激昂し、貞盛につかみかかりますが、護に制止されます。
そこへ、同じく貞盛の叔父である良文が貞盛の館を訪れた、との知らせが届きます。良文は貞盛の方針に同意し、激怒した良正は、自分が仇討の兵を起こし、切り取った将門の領地は自分のものとする、と興奮して宣言します。しかし良文はあくまでも冷静で、これから農繁期なのに私的恨みで兵を動員すればけっきょくは負けだぞ、と良正を諭します。貞盛は良文に感謝しますが、良文は貞盛の賢さと父への冷淡さを指摘し、それが新たな争いの元になるのではないか、と言います。貞盛は、自分の心の奥底を覗かれたように思います。
貞盛はこうした良正の動向を将門に知らせ、自分も本心では将門に味方したい、と手紙で述べますが、将頼も員経も貞盛の策略ではないか、と警戒します。将頼は、伯父の良兼の動向も気にかけ、良兼の娘である良子の表情が曇ります。病に倒れていたその良兼は、かなり回復していたのですが、まだ回復していないふりをして、動こうとはしませんでした。良兼を訪ねてきた妻の詮子は、将門を討つよう良兼を煽るのですが、詮子に惚れ込んでいるとはいえ、弱気になっていた良兼は、農作業の終わる秋までは戦はできないと言い、すぐに動こうとはしません。そんな良兼を詮子は冷たく突き放します。
貞盛・良文の協力の得られなかった良正は、農繁期にも関わらず兵を動員して将門を討とうとし、将門もこれに応じます。出陣前に兵たちを明るくもてなす良子を見て、将門は勇気づけられます。将門軍と良正軍は川曲村で激突し、自信に満ち溢れた粗野な良正は、将門に一騎打ちを申し込みます。将門もこれに応じ、一騎打ちが始まりますが、将門の刀が折れてしまいます。それでも自分に向かってくる将門に人生ではじめて恐怖心を覚えた良正は逃げ出し、戦いは将門軍の勝利に終わります。一騎打ちで弓矢が用いられず、刀だけが使われている演出には疑問が残りますが、致命的な欠陥とは言えないと思います。
今回はこれで終了ですが、これまで描かれてきた人物像を活かした動きの多い面白い回になっており、中盤に入っても高い水準で質が維持されていることから、今後の話にも大いに期待が持てそうです。今回は、貞盛の人物像が深く描かれることになりましたが、これまでの人物描写からして無理のない人物像であり、原作の功績もあるのでしょうが、やはり脚本が優れているな、と改めて想ったものです。将門・貞盛の叔父である良文は、登場回数こそ少ないものの、冷静な態度が印象に残り、存在感があります。領地が坂東平氏のなかで離れた地にあるという設定を活かし、第三者的な立場から冷静に将門とその周辺の人物に接し、物語を客観的立場から説明する役割を担わせるよう、人物造形がなされているのだろうと思います。
それでも将頼は、戦に情けは無用だ、と言って貞盛を討つことに固執します。貞盛は頭の良い優れた人物であり、この好機を逃せば後に災いになる、と将頼は考えています。将頼は将門と同じく、弟の正平(四郎)とは異なり学はありませんが、なかなか鋭いところがあります。将門が貞盛のことを想っているほど、貞盛は将門のことを想っているだろうか、と将頼は将門に問いかけます。しかし将門は、貞盛が卑怯な手を使うのならそれは貞盛の恥であって自分の恥ではなく、自分は貞盛と戦うことになるとしても、堂々と戦いたいのだ、と言って将頼の進言をけっきょく受け入れませんでした。これまでの人物造形に沿った将門の発言であり、無理のない話の展開になっています。
一方、武蔵を抜けて常陸へと向かう途中の貞盛一行ですが、今では貞盛の家臣となった佗田真樹は、将門側が自分たちを討ち取ろうとしたら容易なことだったのに、そうはならなかった、と指摘します。これにたいして貞盛は、将門は少人数の自分たちを襲撃するような人物ではない、と確信をもって高笑いします。対照的な将門と貞盛ですが、やはり付き合いが長いだけあって、貞盛は将門のことをよく理解しています。自邸に帰還した貞盛は、都からの帰国にあたって自分に同行してきた弟の繁盛とともに、母の秀子と面会します。繁盛は将門への憎悪を露にし、復讐を誓います。秀子は、貞盛の妻の小督(源護の三女)を迎えよう、と言います。小督は、貞盛が不在の間は実家の源家にいたのでした。
貞盛は、どうせ明日には源家を訪れねばならないのだから、わざわざ迎えることはない、と言い、母と二人きりで話したいからと言って、繁盛を退出させます。母と二人きりになった貞盛は、将門と和議を結ぶつもりだ、と言います。貞盛は、これ以上恨みを重ねて何になろうと言い、秀子も同意しますが、秀子は、家臣たちも貞盛が仇討に立ち上がると期待しており、将門との和議は難しいだろうし、源家との関係もある、と懸念します。しかし貞盛は、源家と当家は異なるのであり、母が賛同するなら、自分は将門との和議を進めるつもりだ、と力強く宣言し、源家を訪れる前に将門と会う決心をします。
貞盛が一人で将門に会いに行こうとしたところ、随行する、と真樹が言い出しますが、貞盛は許しません。貞盛は、都で面識のあった菅原景行の仲立ちで、将門と面会しようとします。景行は自身で直接開墾を行っており、粗末な身なりで貞盛を出迎えたため、貞盛は驚きます。しかし景行は、都での生活よりも安らかな気持ちだ、と楽しげに語ります。景行は貞盛の意を汲んで将門を連れてきて、貞盛は将門と対面し、率直に嬉しさを表します。自分を恨んでいるだろうな、と言う将門にたいして、中で話をしよう、と貞盛は言い、景行・清忠も交えて将門と貞盛の会談が始まります。
貞盛は、貴子もその乳母も元気だ、西国へ海賊追捕使が再度派遣されることになったが、坂東武者だけで構成されており、これには将門の武勇が大きく影響しているのだろう、と都での様子を将門に語ります。将門は、なぜ自分が憎いと言わないのだ、と興奮しますが、貞盛は将門を制します。自分が悪かった、と言う将門にたいして、自分の方こそ悪かったのだ、と貞盛は言います。互いに相手のことを憎みたくない将門と貞盛は、二人の間のわだかまりをすべて水に流し、国香が押領した土地はすべて貞盛のものとしたうえで、将門が管理する、と決められました。貞盛と将門は、また会おう、と言って笑顔で別れます。
一方貞盛の館では、貞盛が源家を訪れずに行方不明となったことで大騒ぎになっていましたが、貞盛が戻ってきて、将門との間で無事に話が解決した、と聞いた秀子は安堵します。そこへ、貞盛の叔父でもある平良正も源家を訪れている、と繁盛が知らせに来ます。貞盛が源家を訪れると、良正は源護と酒を酌み交わしており、将門に敗れ、息子二人を失った護は、すっかりうちひしがれていました。そこへ小督も現れ、貞盛は久々に妻と対面します。うちひしがれた護とは対照的に、良正は将門を討とうと興奮した様子ですが、将門を騙まし討ちにしようとしたことから坂東での我々の評判はよくなく、すぐに将門を討つわけにはいかない、との貞盛の発言に激昂し、貞盛につかみかかりますが、護に制止されます。
そこへ、同じく貞盛の叔父である良文が貞盛の館を訪れた、との知らせが届きます。良文は貞盛の方針に同意し、激怒した良正は、自分が仇討の兵を起こし、切り取った将門の領地は自分のものとする、と興奮して宣言します。しかし良文はあくまでも冷静で、これから農繁期なのに私的恨みで兵を動員すればけっきょくは負けだぞ、と良正を諭します。貞盛は良文に感謝しますが、良文は貞盛の賢さと父への冷淡さを指摘し、それが新たな争いの元になるのではないか、と言います。貞盛は、自分の心の奥底を覗かれたように思います。
貞盛はこうした良正の動向を将門に知らせ、自分も本心では将門に味方したい、と手紙で述べますが、将頼も員経も貞盛の策略ではないか、と警戒します。将頼は、伯父の良兼の動向も気にかけ、良兼の娘である良子の表情が曇ります。病に倒れていたその良兼は、かなり回復していたのですが、まだ回復していないふりをして、動こうとはしませんでした。良兼を訪ねてきた妻の詮子は、将門を討つよう良兼を煽るのですが、詮子に惚れ込んでいるとはいえ、弱気になっていた良兼は、農作業の終わる秋までは戦はできないと言い、すぐに動こうとはしません。そんな良兼を詮子は冷たく突き放します。
貞盛・良文の協力の得られなかった良正は、農繁期にも関わらず兵を動員して将門を討とうとし、将門もこれに応じます。出陣前に兵たちを明るくもてなす良子を見て、将門は勇気づけられます。将門軍と良正軍は川曲村で激突し、自信に満ち溢れた粗野な良正は、将門に一騎打ちを申し込みます。将門もこれに応じ、一騎打ちが始まりますが、将門の刀が折れてしまいます。それでも自分に向かってくる将門に人生ではじめて恐怖心を覚えた良正は逃げ出し、戦いは将門軍の勝利に終わります。一騎打ちで弓矢が用いられず、刀だけが使われている演出には疑問が残りますが、致命的な欠陥とは言えないと思います。
今回はこれで終了ですが、これまで描かれてきた人物像を活かした動きの多い面白い回になっており、中盤に入っても高い水準で質が維持されていることから、今後の話にも大いに期待が持てそうです。今回は、貞盛の人物像が深く描かれることになりましたが、これまでの人物描写からして無理のない人物像であり、原作の功績もあるのでしょうが、やはり脚本が優れているな、と改めて想ったものです。将門・貞盛の叔父である良文は、登場回数こそ少ないものの、冷静な態度が印象に残り、存在感があります。領地が坂東平氏のなかで離れた地にあるという設定を活かし、第三者的な立場から冷静に将門とその周辺の人物に接し、物語を客観的立場から説明する役割を担わせるよう、人物造形がなされているのだろうと思います。
この記事へのコメント
「修羅の旋風」で触れました『新・平家物語』でも若き日の源頼朝に扮していらっしゃいましたね(合戦シーンでは背後から薙刀で襲ってくる敵兵を一太刀に払いのける瞬間が見られます)。