大河ドラマ『風と雲と虹と』第19回「桔梗の里」

 物語は承平4年(934年)の夏を迎えます。領内の若い女性四人と出会った将門は、未婚であることを女性たちにからかわれます。未婚の将門は、平良兼の娘である良子のことがこのところずっと気になっていました。女性たちが去った後、菅原景行・三宅清忠・将門の弟将平(四郎)が将門を訪ねます。三人は、新たな土地を開墾しようと考えており、将門もその考えに同意します。四人が話していると、女性の悲鳴が聞こえます。その悲鳴の主は、さきほど将門が会った若い女性たちの一人である桔梗でした。源扶が桔梗に言い寄り、強引に迫っていたのですが、そこへ鹿島玄明が現れ、扶をたしなめます。玄明が扶を引きつけている間に桔梗は将門のところへ逃げ、桔梗を追ってきた扶は、将門の姿を見て引き返します。

 その夜、景行・清忠・将平が将門の館を訪れ、将門の母・将頼とともに楽しい時を過ごします。将頼は将門に強く結婚を勧めますが、将門はあまり気が進みません。しかし、自分が結婚するかもしれない、と思ってたいへん喜ぶ郎党の姿を見て、将門は良子の父の良兼に良子との結婚を申し込む決意をします。その頃良兼は、源護の長女である詮子を妻に迎え、詮子の言うがままになっていました。その良兼の館を景行が訪れ、将門と良子との結婚の話を良兼に持ちかけます。

 将門が自分に詫びていると景行から聞かされた良兼は、上機嫌になって将門と良子との結婚に同意しますが、詮子は良子を弟の扶に嫁がせようと考えている、と言います。詮子に心底惚れている良兼は、ここでも詮子の言いなりになり、将門からの申し出を断ります。良兼が詮子に惚れているという描写が、前々回・前回とありましたので、この流れは不自然なものに見えず、相変わらず話がしっかりと作られているな、と思います。良兼と詮子とのやり取りはやや喜劇調で、良兼役の長門勇氏は、このような演技が本当に上手いなあ、と改めて感心します。良子が扶に嫁ぐと景行から聞いた将門は、結婚の申し出を断られたことではなく、良子が扶と結婚することに心穏やかではありません。

 その年の秋、良子は良兼から扶に嫁ぐよう告げられます。良子はこの話にあまり乗り気ではなく、この結婚で自分は幸せになれるだろうか、と良兼に尋ねますが、良子は良兼の返答に納得できません。扶と良子との結婚の話は順調に進み、護と扶を自分の屋敷に迎えることになった良兼は、詮子の父である護が来るということで、張り切ります。良兼の館を訪れた扶は、良兼の館の若い侍女たちにも好色そうな目を向け、その様子を見た扶の姉の詮子は内心焦ります。良兼の館の侍女たちは扶に好意を抱きますが、良子は扶と結婚してよいものか、確信がもてません。

 扶は良兼の館の侍女たちの一人に言い寄りますが、そこに詮子が現れ、さすがに扶もそれ以上は手を出しません。良兼の館に何日いればよいのか、と扶が詮子に尋ねると、結婚の話がまとまるまでだから、三日ほどだろう、と詮子は答えます。すると扶は、侍女たちに好色そうな視線を向けます。扶の人物を知っている詮子は扶の好色をたしなめますが、やはり可愛い弟を本気で叱責することはしません。詮子の愛情は実家に向けられており、良兼夫妻の間の愛情は、良兼から詮子への一方通行というわけです。夜、扶は昼間に言い寄っていた侍女を密かに訪ねようとしますが、深い霧のために建物を見誤ってしまい、間違って良子の寝所に入ってしまいます。

 一方将門は、桔梗に誘われて桔梗の家を訪れ、近くの民人とともに楽しい時を過ごしていました。その場で将門は、自分の良子への想いに確信を持ちます。今回は将門の結婚が中心の話となり、将門が源護一族・伯父の良兼と対立していくことをうかがわせるとともに、源護一族と良兼との関係の内実もしだいに明らかになってきました。良兼が将門と娘の良子との結婚に最初は同意していたにも関わらず、詮子に良子と扶との結婚を勧められると、あっさりと翻意したあたりは、下手な脚本だと唐突で説得力に欠けるところでしょうが、さすがにここまで話の構成がしっかりしているだけあって、自然な流れに見えます。この話に象徴されるように、これまでのところ、脚本がしっかりしているので、安心して見ていられます。

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