大河ドラマ『風と雲と虹と』第22回「修羅の旋風」
かろうじて郎党一人とともに源家の軍勢の襲撃から逃れた将門は、弟の将頼の率いる援軍と合流します。この情報を得た源護の長男である源扶は、一旦退却して将門軍を将門の伯父の平国香の所領に誘いこみ、迎撃しようとします。扶はたんなる粗暴な武者ではないようです。殺された郎党たちを前に、将門たちは強く復讐を誓います。将門軍を迎え撃つ準備を進めている扶ですが、そんな時でも村の娘に手を出そうとして、弟に窘められます。源家の軍が国香の所領で迎撃の準備を進めていると知った将門たちは、国香も将門を殺そうとしているのだ、と確信します。
将門は一計を案じ、林側の正面に空馬を走らせて、馬の蹄の音で正面から将門軍が向かっているかのように見せかけ、主力は徒歩で村の裏から源家の軍勢を攻めます。この策がずばりと的中して源家の軍は退却し、扶の二人の弟は討ち取られます。弟二人を討ち取られた扶は、激昂して将門軍を迎え撃とうとしますが、家臣に諌められ、自らの館へと向かいます。自軍の敗走を知った護は、戦の経験がないために気が動転してしまいます。そこへ国香が現れますが、すっかり弱気になった護は、将門との和睦を示唆します。しかし国香は、坂東に来てからというもの自分は戦には慣れている、と強気な態度を崩さず、あくまでも将門を討ち取ろうとします。国香は、常陸の府中に落ち延びるよう護に勧め、護は従います。
国香が将門を迎え撃とうとしたところに扶が現れ、国香はしばらく休むよう勧めますが、扶は弟たちの仇討をすると興奮しており、国香とともに将門を迎え撃つことになります。国香の家臣の佗田真樹は、将門を討つことに乗り気ではなく、その様子を見た国香は、館を守るよう真樹に指示します。真樹が将門に好意を抱いていることは、第2回
https://sicambre.seesaa.net/article/200909article_18.html
と第3回
https://sicambre.seesaa.net/article/200909article_23.html
にも描写があり、しっかりと伏線を活かした話の構成になっています。
国香と扶は将門を迎撃すべく出陣しますが、将門軍はこれまでの戦いで疲れているだろうから、簡単に打ち破れるだろう、と国香は楽観的な見通しを語ります。しかし、将門軍の進撃は国香の予想以上に速く、国香の思惑は外れます。両軍は平原で向かい合い、今にも互いに矢を放とうとしたとき、国香は将門に言葉戦いを仕掛けます。勝手に兵を動かした振る舞いが朝廷に聞こえたらどうするのだ、と語る国香は、弓を捨てよ、と将門に命じますが、将門はこれに従わず反論し、ついに両軍の戦いが始まります。戦いは激戦になりましたが、士気に勝る将門が優位に立ち、国香と扶の連合軍は敗走します。戦いのなかで扶は片目を失い、将門軍はついに国香の館にまで攻め込み、そこで背に矢を受けて死んでいる国香を見つけます。
その場にいた真樹は、主人の敵討ちのために将門に勝負を挑もうとしますが、将門は真樹を諌め、都にいる国香の長男の貞盛に、国香の死を伝えるよう言います。さらに将門は、貞盛が自分を親の仇として戦いを挑むなら。逃げも隠れもしない、と真樹に堂々と宣言し、元々将門に好意を抱いており、深い恨みを抱いているわけではない真樹は、貞盛に国香の死を伝えるべく、都へと向かいます。将門は、幼い頃に国香の館で貞盛とよく遊んだことを想い、感慨に耽ります。将門は将頼に、国香の館を焼いたのか、と尋ねますが、将頼は違うと答えます。しかし将頼は、敵の館を焼き払うのは作法だろう、と言います。すると将門は、手向かわない者は殺すなと命じ、国香を手厚く葬ろう、と言います。玄明と螻蛄婆は、将門の勝利を遠くから見ていました。戦いを始めた将門は行き着くところまで行くのだ、と言う螻蛄婆にたいして、どこまで行くのだ、と玄明は尋ねます。すると螻蛄婆は、知らない、いや果てなどあるものか、と言います。
真樹は貞盛に国香の死を知らせるべく都へと急ぎますが、貞盛は貴子の館を訪れるなど、相変わらず都での生活を満喫しているようです。貴子の乳母は貞盛に、一ヶ月振りの訪問だと言っていたことから、恋多き貞盛の貴子への情熱はしだいに冷めてきているのかもしれません。貞盛が故郷の妻である小督だけではなく、都の貴子以外の女性とも関係をもっていることは、貴子もその乳母も知っていることでした。貴子と久々に会った貞盛は、花の盛りだ、と貴子を誉めますが、貴子は涙を流します。
貞盛は貴子に進物を渡しますが、貴子は拒否します。進物の要求でもしなければ会えないと思ったのだ、と不安な心情を語る貴子は、貞盛に騙された、と恨み言を述べ立てます。男とはそういうものだ、と言う貞盛にたいして、将門は違う、と貴子は言ってしまいます。その言葉を聞いた貞盛は立ち去ろうとしますが、貴子は貞盛にしがみつき、帰らないで、と懇願します。その様子を部屋の外から窺っていた使用人の女性は、いつものことですね、と貴子の乳母に語りかけます。貞盛と貴子の二人は会うといつもこんな感じで、最後には貴子が負けるようです。貞盛のおかげで暮らしていける、との貴子の発言など、貴子が男に頼ってしか生きていけない、自立できない女性であることが強調された描写になっています。
ここまではいつもの夜だったのですが、そこへ貞盛の弟で同じく上京してきていた繁盛が訪ねて来て、国香が将門に殺されたことを貞盛に伝えます。繁盛は、すぐに帰国して将門を討つのが坂東の作法だ、と貞盛に言いますが、貞盛は呆然とした様子で、繁盛の呼びかけに答えることができません。このやり取りを聞いていた貴子は、原因が自分にあるのではないかと思い、貞盛が帰国するのではないか、と不安な様子です。今回は話が大きく動きましたが、将門と真樹との関係など、これまでの設定を上手く活かした話の構成になっており、相変わらず見応えがあります。親友が父の仇になった、という悲劇的状況のなか、貞盛の心理がどのように描かれていくのか、注目しています。
将門は一計を案じ、林側の正面に空馬を走らせて、馬の蹄の音で正面から将門軍が向かっているかのように見せかけ、主力は徒歩で村の裏から源家の軍勢を攻めます。この策がずばりと的中して源家の軍は退却し、扶の二人の弟は討ち取られます。弟二人を討ち取られた扶は、激昂して将門軍を迎え撃とうとしますが、家臣に諌められ、自らの館へと向かいます。自軍の敗走を知った護は、戦の経験がないために気が動転してしまいます。そこへ国香が現れますが、すっかり弱気になった護は、将門との和睦を示唆します。しかし国香は、坂東に来てからというもの自分は戦には慣れている、と強気な態度を崩さず、あくまでも将門を討ち取ろうとします。国香は、常陸の府中に落ち延びるよう護に勧め、護は従います。
国香が将門を迎え撃とうとしたところに扶が現れ、国香はしばらく休むよう勧めますが、扶は弟たちの仇討をすると興奮しており、国香とともに将門を迎え撃つことになります。国香の家臣の佗田真樹は、将門を討つことに乗り気ではなく、その様子を見た国香は、館を守るよう真樹に指示します。真樹が将門に好意を抱いていることは、第2回
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と第3回
https://sicambre.seesaa.net/article/200909article_23.html
にも描写があり、しっかりと伏線を活かした話の構成になっています。
国香と扶は将門を迎撃すべく出陣しますが、将門軍はこれまでの戦いで疲れているだろうから、簡単に打ち破れるだろう、と国香は楽観的な見通しを語ります。しかし、将門軍の進撃は国香の予想以上に速く、国香の思惑は外れます。両軍は平原で向かい合い、今にも互いに矢を放とうとしたとき、国香は将門に言葉戦いを仕掛けます。勝手に兵を動かした振る舞いが朝廷に聞こえたらどうするのだ、と語る国香は、弓を捨てよ、と将門に命じますが、将門はこれに従わず反論し、ついに両軍の戦いが始まります。戦いは激戦になりましたが、士気に勝る将門が優位に立ち、国香と扶の連合軍は敗走します。戦いのなかで扶は片目を失い、将門軍はついに国香の館にまで攻め込み、そこで背に矢を受けて死んでいる国香を見つけます。
その場にいた真樹は、主人の敵討ちのために将門に勝負を挑もうとしますが、将門は真樹を諌め、都にいる国香の長男の貞盛に、国香の死を伝えるよう言います。さらに将門は、貞盛が自分を親の仇として戦いを挑むなら。逃げも隠れもしない、と真樹に堂々と宣言し、元々将門に好意を抱いており、深い恨みを抱いているわけではない真樹は、貞盛に国香の死を伝えるべく、都へと向かいます。将門は、幼い頃に国香の館で貞盛とよく遊んだことを想い、感慨に耽ります。将門は将頼に、国香の館を焼いたのか、と尋ねますが、将頼は違うと答えます。しかし将頼は、敵の館を焼き払うのは作法だろう、と言います。すると将門は、手向かわない者は殺すなと命じ、国香を手厚く葬ろう、と言います。玄明と螻蛄婆は、将門の勝利を遠くから見ていました。戦いを始めた将門は行き着くところまで行くのだ、と言う螻蛄婆にたいして、どこまで行くのだ、と玄明は尋ねます。すると螻蛄婆は、知らない、いや果てなどあるものか、と言います。
真樹は貞盛に国香の死を知らせるべく都へと急ぎますが、貞盛は貴子の館を訪れるなど、相変わらず都での生活を満喫しているようです。貴子の乳母は貞盛に、一ヶ月振りの訪問だと言っていたことから、恋多き貞盛の貴子への情熱はしだいに冷めてきているのかもしれません。貞盛が故郷の妻である小督だけではなく、都の貴子以外の女性とも関係をもっていることは、貴子もその乳母も知っていることでした。貴子と久々に会った貞盛は、花の盛りだ、と貴子を誉めますが、貴子は涙を流します。
貞盛は貴子に進物を渡しますが、貴子は拒否します。進物の要求でもしなければ会えないと思ったのだ、と不安な心情を語る貴子は、貞盛に騙された、と恨み言を述べ立てます。男とはそういうものだ、と言う貞盛にたいして、将門は違う、と貴子は言ってしまいます。その言葉を聞いた貞盛は立ち去ろうとしますが、貴子は貞盛にしがみつき、帰らないで、と懇願します。その様子を部屋の外から窺っていた使用人の女性は、いつものことですね、と貴子の乳母に語りかけます。貞盛と貴子の二人は会うといつもこんな感じで、最後には貴子が負けるようです。貞盛のおかげで暮らしていける、との貴子の発言など、貴子が男に頼ってしか生きていけない、自立できない女性であることが強調された描写になっています。
ここまではいつもの夜だったのですが、そこへ貞盛の弟で同じく上京してきていた繁盛が訪ねて来て、国香が将門に殺されたことを貞盛に伝えます。繁盛は、すぐに帰国して将門を討つのが坂東の作法だ、と貞盛に言いますが、貞盛は呆然とした様子で、繁盛の呼びかけに答えることができません。このやり取りを聞いていた貴子は、原因が自分にあるのではないかと思い、貞盛が帰国するのではないか、と不安な様子です。今回は話が大きく動きましたが、将門と真樹との関係など、これまでの設定を上手く活かした話の構成になっており、相変わらず見応えがあります。親友が父の仇になった、という悲劇的状況のなか、貞盛の心理がどのように描かれていくのか、注目しています。
この記事へのコメント
住民を村から追い出し、将門迎撃に臨む扶。「声を出したら斬るぞ」――脅し文句の凄みを一層強める、低く野太い声。紫裾濃縅の鎧兜に身を固めたその出で立ちも威圧感満点です。
激しい戦の末、扶の弟のひとり・護を討ち取った将門。ところが、屋内にはまだ母親に泣き縋る2人の幼子がいました。縦横無尽に暴れ回る武者に怯え、外へ出られずにいたのです。「怖いよー」――か細い声を聞いたのか一度は馬脚を止める将門ですが、結局はそのまま村を去り扶勢の追撃に出てしまいます。
一方、落ちゆく彼らの手で既に数棟が火をかけられており、灰燼に帰すのも時間の問題です。母子3人に救いの手を差し伸べる者は現れたのでしょうか、少なくとも映像には登場していません。
扶勢はこの後更に別の村も紅蓮の炎に包んでおり、放火戦術を多用する鬼武将のイメージが自ずと焼き付いて来ます。『草燃える』の義経に扶とそっくりな鎧(但し兜の鍬形は異なります)を纏わせたのも、きっと同じイメージを植え付けるのが狙いだったのかも知れませんね。
『草燃える』と『風と雲と虹と』の制作陣はわりと重なっていたようで、将門の叶えられなかった夢を頼朝や坂東武士団が叶えることも『草燃える』の裏主題の一つだった、とどこかで読んだ記憶があります。
本作品の武者姿に改めて着目しますと、星兜のかぶり方も『新・平家物語』を踏襲していることが解ります。大童(おおわらわ)に垂れ広げた髪、鉢の頂辺孔(てへんのあな)から高々と出した烏帽子。忍緒(しめお)の取り回しも上顎に陣取る丸結びが特徴の上下二段式です。
眉庇(まびさし)に陣取る鍬形台の猪顔よろしく住民達を睨みつける扶。内兜の乱髪も鎧の背にまで長々と毛先が覗き、禍々しさを感じさせますね。
唇下の丸結びは今でこそ織豊・徳川時代題材の作品に限られていますが、まだ鉢から烏帽子を出す描写がない白黒の『源義経』など古い大河ドラマではこれが当たり前とされていたわけですね。これは、その烏帽子の中に髻(もとどり)がある武者姿を想定した『草燃える』にも当てはまります。
管理人さんも機会がおありでしたら、1986年の水曜時代劇『武蔵坊弁慶』に倣って下顎結束を採用している平成大河の大鎧姿(残念ながら『北条時宗』は完全版未発売です)と見比べてみて下さい…但し『真田丸』の矢沢頼綱は除きます。
やや大きめな一軒家の前で馬脚を停める鎧武者。数秒ほどして離れると、家は瞬く間に火柱に――『草燃える』でも義経勢の牟礼高松焼き討ちに見立てられていた映像ですね。
『炎立つ』についてはご覧になっていらっしゃらない旨を別エントリで拝見しましたが、扱い方に違いはあるものの再び屋島合戦としてこの場面が流用されています。
僕自身こちらに初めてお邪魔したときは気づいていなかったのですが将門役・加藤剛さん、今年6月に逝去していらしたんですね。合掌。