大河ドラマ『風と雲と虹と』第21回「欺し討ち」

 良子を連行して結婚することになった将門は、良子に強引な手段をとったことを詫びますが、良子と結婚するにはこうするしかなかったと弁明し、良子もそれを受け入れます。娘の良子をさらわれ、妻の詮子の叱咤で将門を討伐しようとした良兼ですが、久しぶりに鎧を着てよろけてしまい、老いを感じます。良兼は詮子に自身の鎧姿を見せ、詮子が喜ぶのを見て、満足気な様子を見せます。

 良兼は戦の準備を進めますが、そこへ菅原景行からの使者である三宅清忠が訪ね、良子からの手紙を良兼に渡します。良兼は、その手紙で良子が幸せそうにしているのを知り、さらに良子の幸せのみを願ってではなく、妻の詮子の勧めにしたがって良子と源扶との結婚を決めたことに改めて気づき、将門討伐の決心が鈍ります。良兼は、返答はいずれすると言い、清忠を帰します。そこへ詮子が現れ、良子からの手紙を見せるよう良兼に言いますが、黙れ、と良兼は詮子を怒鳴りつけ、拒絶します。腹黒いところはあっても、良兼は子煩悩なだけに、惚れ込んでいる詮子を怒鳴りつけても、不自然には見えません。良兼は、詮子から離婚を示唆されたこともあって、いっそう心労がつのり、病に倒れてしまいます。

 将門は、良兼からの返答を待っていますが、なかなか来ないので、良兼の様子を探ろうとします。そこへ鹿島玄明が現れ、良兼が病に倒れ、終結していた良兼の郎党たちも去ったことを知らせます。玄明は、自ら良兼の館への訪問を申し出て、将門の郎党を装い良兼の館へ赴きます。玄明は病に伏した良兼には会えませんでしたが、詮子との面会はかない、良兼の怒りは治まっているものの、源護一家、とくに護の息子たちが怒っている、と聞かされます。将門は、扶を辱しめたことは確かだから、一度詫びなければならない、と決心します。詮子は玄明に、将門自身が源護の館に赴き、謝罪すれば解決するのではないか、と言います。清忠も良子も罠ではないかと疑いますが、将門は護の館を訪れる決心をします。

 将門は、謝罪の書状を源家に送り、護の館を訪れることを伝えます。その書状を受け取った源家には、詮子からの書状も届いており、そこには将門を討ち取る計画が記されていました。源家の者たちは、将門の伯父の平国香にも同心するように言い、国香も将門を討ち取る決意をします。わずかな郎党を引き連れて護の館へと向かった将門は、その途中で護の3人の息子たちに襲撃されます。将門は、股肱の臣の伊和員経を弟の将頼へと遣わして援軍を呼ぶことにし、その間はわずかな手勢で源家の軍を迎え撃とうとします。兵の数で上回っている敵からの攻撃をしのぐために、将門は林の中に入り、一度は敵勢を撃退します。

 すると扶は、林に火をつけて将門を誘い出そうとします。この様子を螻蛄婆と玄明も見ており、玄明は将門を救おうとしますが、このていどの急場を自力で切り抜けられないようでは、将門は大したことはできない、と言います。螻蛄婆は、純友と将門に賭けたのだ、と玄明に真意を説明します。将門の郎党たちは、自分たちが囮になって敵を引きつけている間に、林から逃れるように言い、郎党の一人は将門の服を身に着けて、将門の身代わりになって死にます。郎党たちの奮戦もあり、将門は1人の郎党とともに脱出に成功しますが、他の郎党は全員討ち死にし、将門は復讐を誓います。

 今回、ついに争乱の幕が切って落とされました。これまでの話の流れからして自然に見えましたし、良子や清忠など周囲の人物が懸念したにも関わらず、将門が護の館を訪れ、騙まし討ちにあったことも、これまでの将門の描かれ方からして、無理のない展開でした。今回とくによかったのは、娘と妻との間で苦悩する良兼で、長門勇氏は相変わらず安定して素晴らしい演技を見せてくれます。詮子役の星由里子氏も、気が強く腹黒くて美しい女性を好演しています。

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