歴史時代の異常気候

 過去1500年の異常気候についての研究(Mann et al., 2009)が公表されました。過去1500年の世界の気候記録によると、20世紀の温暖化以前の気候異常期として、950~1250年頃の温暖期と、1400~1700年頃の寒冷期が挙げられますが、こうした異常気候をもたらした仕組みはほとんど解明されていません。この研究では、年輪・氷床コア・サンゴ・堆積物から得られた気候の代替データが解析され、代替データに基づく地表温度のパターンと気候モデルから再現されたパターンが比較されました。

 その結果、エルニーニョや北大西洋振動といった大規模な物理過程は地球に届く日射量の変化に影響され、確認されたパターンの大半の原因となったことが判明した、とのことです。この研究において代替データで確認された変化には、主な気候モデルの模擬実験では再現されなかったものもあることから、そうしたモデルの気候変動模擬実験能力の改善に向けて、研究を重ねる必要がある、とされています。歴史学・人類学においても、こうした自然科学の研究成果を積極的に取り入れる傾向が強まっているように思われ、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Mann ME. et al.(2009): Global Signatures and Dynamical Origins of the Little Ice Age and Medieval Climate Anomaly. Science, 326, 5957, 1256-1260.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1177303

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