スペシャルドラマ『坂の上の雲』第1回「少年の国」

 海外ロケが行なわれ、テレビドラマとしてはあまりにも豪華な出演者がそろい、主役級の3人にいずれもしっかりと演技のできる人を配したことなどから(正岡子規の妹律も含めて4人が主役級だとしても、主役級全員がしっかり演技ができることに変わりありません)、NHKがこのドラマに本気であることがよく分かります。その分、2009~2011年の大河ドラマは割を食うことになるのでしょう。このドラマは、大河ドラマという位置づけではないものの、準大河ドラマという性格の強い作品と言ってよいでしょうから、大河ドラマの項目で扱うことにします。

 『坂の上の雲』は、作者の司馬遼太郎氏が亡くなるまで映像化を許可しなかったことが知られており、映像化には疑問もないわけではありませんが、NHKが本気であることから、歴史ドラマとしては期待してきました。ただ、私は20代前半までは司馬作品の熱心な愛読者だったものの、20代半ば以降は、司馬作品を読むことはなくなり、随筆も含む司馬氏の作品で提示される歴史像にかなり批判的になりましたから、『坂の上の雲』が映像化されることになったからといっても、ほとんど興奮はありません。おそらく、20歳頃にこのドラマが、『坂の上の雲』が映像化されていたら、出来にもよりますが、かなり熱心に見ていたでしょうし、ガイドブックも購入していたことでしょう。

 さて、第1回の内容ですが、真之と子規の中学生時代に無理がありすぎるのはさておくとして、明治初期の青春群像劇としてはなかなかよくできていると思います。90分という大河ドラマ2回分の長さでしたが、だれるということはなく、最後まで見ることができました。上述したように私はかつて司馬作品の熱心な愛読者で、『坂の上の雲』はとくに好きな作品だったので、何度も読み直したものですが、司馬作品の愛読者ではなくなって10年以上経過しており、『坂の上の雲』も最後に読んでから十数年以上経過しているだけに、原作の内容は正確に覚えているわけではありません。そのため、今回の脚本が原作にどのていど忠実なのか、断言はできないのですが、たとえ原作からの改変がかなりの程度あったとしても、歴史ドラマとしてはなかなか見応えがあり、本格的な作品になるのではないか、との期待を抱かせるに充分な内容だったと思います。さすがにNHKは、本気になると質の高いドラマを見せてくれるものです。

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