LB1の頭蓋の分析

 LB1の頭蓋を現代人・中新世~更新世の化石人類・アフリカの現生類人猿と比較した研究(Baab, and McNulty., 2009)が報道されました。フロレシエンシスの特集が組まれた“Journal of Human Evolution”の最新号に掲載された研究ですが、オンライン版では昨年から公開されていました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_19.html

 LB1はインドネシア領フローレス島の更新世末期の地層から発見された人骨で、この地層から発見された他の人骨群も含めてホモ属の新たな種フロレシエンシスと分類する場合、LB1はその正基準標本とされています。LB1が新種フロレシエンシスなのか、それとも病変の現生人類なのか、議論が続いていますが、この研究では3D形態測定学分析に基づき、LB1は病変の現生人類ではなく、原始的なホモ属の小柄な子孫という可能性が高い、とされています。

 また、以前から指摘されているLB1の頭蓋の非対称性については、現代人・アフリカの現存類人猿の範囲内に収まり、化石生成の過程で生じたものとして説明可能だ、とされています。ただ、フロレシエンシスがどのような進化過程で誕生したのかという問題については、いぜんとして曖昧だ、と述べられています。この研究でもLB1新種説が支持されており、新種説の優位が崩れることはないだろうと思われます。


参考文献:
Baab KL, and McNulty KP.(2009): Size, shape, and asymmetry in fossil hominins: The status of the LB1 cranium based on 3D morphometric analyses. Journal of Human Evolution, 57, 5, 608-622.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2008.08.011

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