大河ドラマ『風と雲と虹と』第16回「恋の訣れ」

 中島に向かった海賊追捕の一団は、地元で動員された兵をのぞき、海賊たちにより殺されてしまいました。一方、純友とともに板島へと向かった将門は、道中で、民人たちが海賊に敬意と親しみを表していることを知り、衝撃を受けます。将門は、海賊元々民人だ、との純友の発言が真実だと理解しました。海賊が襲うのは、都への献上物を積んだ船だけであり、役人の上前を奪っているだけなのだ、と言う純友にたいして、純友の心は海賊と一つになっているのだなあ、と将門は言います。そこへ純友配下の海賊である鮫がやって来て、都から来た海賊追捕団が全滅したと報告します。将門は、純友がすべてを仕組んだのだと気づいて怒り、なぜ自分だけ助けたのだ、と純友に詰め寄ります。純友は、これは戦なのだ、と将門に言います。

 伊予国府では、相変わらず伊予介の藤原正経が伊予守の平維久に責任を押しつけようとして、傍目からは滑稽なやり取りが繰り返されていますが、二人ともに妙案が浮かびません。そこへ純友が戻ってきて、海賊追捕団は全滅したが、海賊も大打撃を受け、地元で動員された兵士たちも半数は討ち死にしたと報告すればよい、と進言し、維久と正経は喜びます。

 浜辺で将門が落ち込んでいると、千載が慰めますが、自分だけが生き残ったのは恥だ、と将門は言い放ちます。千載は、生き残ったのがなぜ恥なのか、と将門に言います。このやり取りは、東国の武者と西国の人々との対比を表している、ということなのでしょう。そこへ純友が現れ、将門とともに酒を酌み交わします。都が好きになれないと言う将門にたいして、純友は坂東に帰るよう勧めます。坂東でもこの伊予のような事態が生じているだろう、と言う純友にたいして、自分はあなたのようにはならない、将門は言います。将門は、純友にたいして怒りを覚えつつも、純友に魅力を感じているということなのか、また会いましょう、と純友に言います。

 藤原子高の屋敷に侵入した武蔵は仕掛けられていた罠にかかり、子高に捉えられてしまいます。子高は武蔵に刀を突きつけ、刀を捨てないと武蔵を殺すと言って脅します。武蔵は配下の者たちに逃げろと言いますが、配下の者たちは刀を捨てて投降します。伊予から去った玄明は武蔵が捕らえられたことを藤原恒利から聞き、傀儡の一座の協力を得て、処刑直前の武蔵たちを救い出します。武蔵は、坂東に行かないか、と螻蛄婆に勧められます。

 都に戻った将門は貴子の屋敷を訪れますが、貞盛がやって来て、堂々と貴子の寝所を訪れる様子を木陰から見てしまいます。将門は衝撃を受けて怒り、思わず刀に手をかけようとしますが、かえって惨めになると思ったのか、貞盛への友情がまだあるということなのか、屋敷から離れ、泣きながら夜道を走り続けます。地面に伏した将門が土をつかみ、坂東へ帰ろう、と決意するところで今回は終了です。

 これで第5回の途中から続いた都編もいったん終わり、次回からは再び坂東に舞台が移ることになります。将門が都に馴染めないだろうということは、上京前の将門の言動から容易に想像できましたし、坂東が第一だった将門が、一時的とはいえ帰郷を諦めて都での生活を決意した唯一の理由である貴子との恋に破れたわけですから、話の流れはごく自然なものになっています。次回からの坂東での話も楽しみです。

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