大河ドラマ『風と雲と虹と』第13回「酷い季節」
螻蛄婆の仲介により、海賊団の首領たちと会った純友は、彼らと親交を深めようとするのですが、純友は伊予掾だけに、首領たちは純友にたいして警戒心と劣等感をいだき、なかなか純友と打ち解けようとはしません。その様子を見た純友は、お前たちのなかには元名族も元漁師もいるが、今はともに海賊であり、自分はお前たちを分け隔てはしない、と言います。さらに純友は、海賊は腐った国家から追われ、国家に敵対する立場の者たちであるが、海賊であることを誇ろう、自分も伊予掾ではあるものの、海賊であることを選んだ、我々は仲間だ、と高らかに宣言します。これにより、純友は海賊団の首領たちの心をつかみ、後に反乱を起こすさいの基盤を得たことになります。海賊団の首領の一人である「くらげ丸」を演じているのは清水紘治氏で、海賊たちの用心深さ・卑屈さといった複雑な心理をよく表現できているように思います。
都にいる将門は、盗賊たちを退治したことで主人の藤原忠平に誉められ、小一条院の他の家人たちや右兵衛府の上司・同僚たちから持て囃されます。そこへ貞盛がやって来て、貴子の屋敷をともに訪ねよう、と誘います。将門が貴子の屋敷に赴こうとしたところ、興世王と名乗る人物が訪ねてきます。将門に会った興世王は、格別の用事はなく、一躍高名になった将門を見たかったのだ、と言って高笑いしながらすぐに帰ります。将門は、変わった人だと言いながらも不快感は抱いていないようです。今回は顔見世ていどの出演でしたが、興世王役の米倉斉加年氏は怪しげな雰囲気を醸しだしていて、期待通りの名演を見せてくれそうです。
将門が貴子の屋敷を訪れると、貴子とその乳母は手柄を立てた将門を大歓迎します。貞盛が遅れるとの報告を貞盛の家人から受けた貴子の乳母は、この機会に、貴子が将門を慕っているのに、将門は東国に帰ってしまうのか、と将門を問い詰めます。この様子を見ていた貴子は取り乱し、泣きながら部屋から出ていきます。貴子を追った将門は、東国に帰らず都に残る、と言って貴子を抱き寄せます。将門の言葉を聞いて貴子は喜びますが、貴子に正式に結婚を申し込むにあたって、国許にも知らせてしかるべき手続きを踏まないといけない、との将門の発言を聞くと、複雑な表情を見せます。将門のそういう生真面目なところが好きだという貴子ですが、将門が依然として東国に心を残していることに気づき、不安になったのでしょう。
そこへ、貞盛が慌てた様子で貴子の屋敷にやって来ます。貞盛は、将門が退治した盗賊団の首領が親王の息子の王子であり、その他の主だった二人が、中納言の息子と参議の息子だった、と将門に伝えます。貞盛は将門の立場が悪くなるのを心配して急いで知らせに来たのですが、貞盛の懸念通り、翌朝には将門に殺された盗賊団が貴人たちの息子だったことは知れ渡っており、小一条院の他の家人たちや右兵衛府の上司・同僚たちは冷ややかな視線を将門に向けます。
将門は小一条院の家司である藤原子高に、将門ほど武勇に優れた者が、仮面をつけていたとはいえ、王子の気品を見抜けなかったのか、最後に一人になった王子を捕縛できず殺してしまったのは不審だとの意見もある、と問い詰められます。さらに将門は、右兵衛府の役人たちの任務は捕縛にあり、それが法であって、国家は法で成り立つのだ、と子高に指摘されて反論できません。子高は、近く西海の海賊討伐に追捕使が送られることになり、武勇の優れた者が動員される、と将門に告げます。自分は西海に行くことになるのか、と尋ねる将門にたいして、子高は曖昧な返事をしますが、自分たちは将門の味方だ、とも言います。
将門は、右兵衛府で上司たちから2~3日休むように言われて、さらに落ち込みます。そこへ貞盛が将門を訪ねてきます。皆が自分を避けるのに、お前は違うのだな、と言って将門は喜びます。将門から子高の話を聞いた貞盛は、小一条院に土地を献上しろ、と改めて勧めます。それにたいして将門は怒り、儀式と権力争いに明け暮れる腐った政府高官に土地を献上することには納得がいかない、彼らは白蟻だ、と興奮して言います。それを聞いた貞盛は、白蟻は言い過ぎだろうと呆れたように言い、興奮していた将門は我に帰ります。
将門が貴子の屋敷を訪れると、貴子の乳母は将門にたいへん同情し、悪いのは藤原一門だ、と持論を述べ立てます。それにたいして将門は、自分を避けている人たちのことはもうどうでもよい、と言います。貞盛から坂東の土地を献上しろと進められた、と呆れたように将門が伝えると、それは名案だ、さすが世慣れた貞盛だ、と乳母は感心したように言います。これを聞いて将門が怒っているようだと気づいた貴子は、話を止めるように乳母にそれとなく伝えますが、土地を献上したらよいのでは、と乳母は構わず言い続けます。将門は、土地は自分だけのものではない、と興奮した様子で言い、それを聞いた乳母は、やはり将門は坂東のことが第一なのだと言って、貴子も悲しそうな表情を見せます。
将門はそのまま貴子の屋敷を辞し、門前で出会った玄明とともに歩いていきます。その後、貞盛が将門を訪ねて貴子の屋敷にやって来ます。将門が帰った後だと聞いた貞盛は自分も帰ろうとしますが、乳母は貞盛を部屋に案内します。貞盛は、子高が話した西海の海賊追捕の話を将門に伝え、将門にそれに加わるよう勧めに来たのでした。そのことを貴子と乳母に話した貞盛は、将門が都からいなくなると寂しいでしょうね、と貴子に問いかけます。この様子を見た乳母は、その場を離れて貴子と貞盛を二人きりにします。将門に深く同情している様子を見せた貴子にたいして、貞盛は嫉妬の念から、報われない恋をしている自分こそ気の毒なのだ、と貴子にたいして恋心を打ち明けます。
今回は、手柄をあげたはずの将門の立場が一転して悪くなり、その間の人々の心理変化がよく描かれているとともに、話が上手くつながっていることがよく分かり、相変わらず面白くなっています。貴子の将門への想いを、貞盛が不在という好機に将門に伝えようとしたものの、けっきょく将門の坂東への強い想いに気づき、ならば、火雷天神のお告げにあった、貴子の道が開けるという坂東の男という点では、貞盛も将門と同じであり、貞盛でもよいではないかと割り切って、貴子と貞盛が結ばれるようお膳立てをする乳母の心理も、よく描かれていたと思います。また、そうした乳母の心理を、奈良岡朋子氏はよく表現できています。貴子の心理もよく描かれていて、吉永小百合氏は貴子の不安を上手く演じているように思います。吉永氏は、演技派と言われることはあまりないようですが、貴子という役には合っているように思います。配役の妙ということなのでしょう。
都にいる将門は、盗賊たちを退治したことで主人の藤原忠平に誉められ、小一条院の他の家人たちや右兵衛府の上司・同僚たちから持て囃されます。そこへ貞盛がやって来て、貴子の屋敷をともに訪ねよう、と誘います。将門が貴子の屋敷に赴こうとしたところ、興世王と名乗る人物が訪ねてきます。将門に会った興世王は、格別の用事はなく、一躍高名になった将門を見たかったのだ、と言って高笑いしながらすぐに帰ります。将門は、変わった人だと言いながらも不快感は抱いていないようです。今回は顔見世ていどの出演でしたが、興世王役の米倉斉加年氏は怪しげな雰囲気を醸しだしていて、期待通りの名演を見せてくれそうです。
将門が貴子の屋敷を訪れると、貴子とその乳母は手柄を立てた将門を大歓迎します。貞盛が遅れるとの報告を貞盛の家人から受けた貴子の乳母は、この機会に、貴子が将門を慕っているのに、将門は東国に帰ってしまうのか、と将門を問い詰めます。この様子を見ていた貴子は取り乱し、泣きながら部屋から出ていきます。貴子を追った将門は、東国に帰らず都に残る、と言って貴子を抱き寄せます。将門の言葉を聞いて貴子は喜びますが、貴子に正式に結婚を申し込むにあたって、国許にも知らせてしかるべき手続きを踏まないといけない、との将門の発言を聞くと、複雑な表情を見せます。将門のそういう生真面目なところが好きだという貴子ですが、将門が依然として東国に心を残していることに気づき、不安になったのでしょう。
そこへ、貞盛が慌てた様子で貴子の屋敷にやって来ます。貞盛は、将門が退治した盗賊団の首領が親王の息子の王子であり、その他の主だった二人が、中納言の息子と参議の息子だった、と将門に伝えます。貞盛は将門の立場が悪くなるのを心配して急いで知らせに来たのですが、貞盛の懸念通り、翌朝には将門に殺された盗賊団が貴人たちの息子だったことは知れ渡っており、小一条院の他の家人たちや右兵衛府の上司・同僚たちは冷ややかな視線を将門に向けます。
将門は小一条院の家司である藤原子高に、将門ほど武勇に優れた者が、仮面をつけていたとはいえ、王子の気品を見抜けなかったのか、最後に一人になった王子を捕縛できず殺してしまったのは不審だとの意見もある、と問い詰められます。さらに将門は、右兵衛府の役人たちの任務は捕縛にあり、それが法であって、国家は法で成り立つのだ、と子高に指摘されて反論できません。子高は、近く西海の海賊討伐に追捕使が送られることになり、武勇の優れた者が動員される、と将門に告げます。自分は西海に行くことになるのか、と尋ねる将門にたいして、子高は曖昧な返事をしますが、自分たちは将門の味方だ、とも言います。
将門は、右兵衛府で上司たちから2~3日休むように言われて、さらに落ち込みます。そこへ貞盛が将門を訪ねてきます。皆が自分を避けるのに、お前は違うのだな、と言って将門は喜びます。将門から子高の話を聞いた貞盛は、小一条院に土地を献上しろ、と改めて勧めます。それにたいして将門は怒り、儀式と権力争いに明け暮れる腐った政府高官に土地を献上することには納得がいかない、彼らは白蟻だ、と興奮して言います。それを聞いた貞盛は、白蟻は言い過ぎだろうと呆れたように言い、興奮していた将門は我に帰ります。
将門が貴子の屋敷を訪れると、貴子の乳母は将門にたいへん同情し、悪いのは藤原一門だ、と持論を述べ立てます。それにたいして将門は、自分を避けている人たちのことはもうどうでもよい、と言います。貞盛から坂東の土地を献上しろと進められた、と呆れたように将門が伝えると、それは名案だ、さすが世慣れた貞盛だ、と乳母は感心したように言います。これを聞いて将門が怒っているようだと気づいた貴子は、話を止めるように乳母にそれとなく伝えますが、土地を献上したらよいのでは、と乳母は構わず言い続けます。将門は、土地は自分だけのものではない、と興奮した様子で言い、それを聞いた乳母は、やはり将門は坂東のことが第一なのだと言って、貴子も悲しそうな表情を見せます。
将門はそのまま貴子の屋敷を辞し、門前で出会った玄明とともに歩いていきます。その後、貞盛が将門を訪ねて貴子の屋敷にやって来ます。将門が帰った後だと聞いた貞盛は自分も帰ろうとしますが、乳母は貞盛を部屋に案内します。貞盛は、子高が話した西海の海賊追捕の話を将門に伝え、将門にそれに加わるよう勧めに来たのでした。そのことを貴子と乳母に話した貞盛は、将門が都からいなくなると寂しいでしょうね、と貴子に問いかけます。この様子を見た乳母は、その場を離れて貴子と貞盛を二人きりにします。将門に深く同情している様子を見せた貴子にたいして、貞盛は嫉妬の念から、報われない恋をしている自分こそ気の毒なのだ、と貴子にたいして恋心を打ち明けます。
今回は、手柄をあげたはずの将門の立場が一転して悪くなり、その間の人々の心理変化がよく描かれているとともに、話が上手くつながっていることがよく分かり、相変わらず面白くなっています。貴子の将門への想いを、貞盛が不在という好機に将門に伝えようとしたものの、けっきょく将門の坂東への強い想いに気づき、ならば、火雷天神のお告げにあった、貴子の道が開けるという坂東の男という点では、貞盛も将門と同じであり、貞盛でもよいではないかと割り切って、貴子と貞盛が結ばれるようお膳立てをする乳母の心理も、よく描かれていたと思います。また、そうした乳母の心理を、奈良岡朋子氏はよく表現できています。貴子の心理もよく描かれていて、吉永小百合氏は貴子の不安を上手く演じているように思います。吉永氏は、演技派と言われることはあまりないようですが、貴子という役には合っているように思います。配役の妙ということなのでしょう。
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