大河ドラマ『風と雲と虹と』第7回「女盗有情」

 荒れ屋敷を訪れた将門の様子を、中から貴子とその乳母が見ていました。中に入ってこなかった将門に、二人は好感を抱きます。二人の会話から、貴子の身の上が明らかとなります。貴子は嵯峨天皇の曾孫で、今では落ちぶれた生活を送っています。貴子の乳母は、いつしか将門のような立派な人が貴子を迎えてくれないものだろうか、と言いますが、この発言は貴子の人物像を象徴しているかもしれません。乳母は藤原氏が貪欲なためにこのように落ちぶれてしまったのだ、と恨み言を述べ、菅原道真に同情し、道真と火雷天神との関係や火雷天神への民衆の信仰の篤さを貴子に説明しますが、これは後の展開の伏線になっているのでしょう。

 忠平からはじめて命を受けた将門は奮い立ちますが、それは遊びごとの約束についての文を相手に使わすもので、大した用ではありませんでした。将門はまたもや都の在り様に失望します。その帰りに、将門は以前出会った仮面の盗賊団が屋敷に忍び込むのを見かけます。その盗賊団が屋敷で家人たちを殺し、家産を盗もうとするのを見た将門は、盗賊の一人季光を殺害して盗賊団を追い払います。そこに三宅清忠らが現れますが、清忠は、季光の兄の季重を見ているはずなのに、見ていないと証言します。

 盗賊団の頭領の武蔵が逃げ込んだ屋敷には、純友がいました。武蔵と純友は深い関係にありました。そこへ、清忠が純友を訪れます。清忠は以前から純友と通じていたのでした。これで、清忠が盗賊を追捕しようとする将門を止めたり、季重を見ていないと証言したり、将門の小一条院での様子を純友が把握していた理由も判明しました。これは原作の功績なのかもしれませんが、よく話ができていると思います。純友は、自身の大望のために将門も盗賊団も失いたくないと考え、武蔵と季重に将門を討たないよう要請しますが、二人は納得しません。

 盗賊団を退けた将門の武名はあがり、忠平の五男師尹(後に左大臣、小一条流の祖)が姫の屋敷を訪ねるにあたって警護を命じられます。しかし、このような若者の恋遊びの警護をすることに、将門は屈辱を覚えます。侍所で所在無く過ごしている将門に、文が投げ込まれます。その文にある場所に将門が向かうと、螻蛄婆が現れ、屋敷に案内します。屋敷には傀儡たちがいて美濃たちによる見世物が始まり、そこに純友が現れる、というところで今回は終了です。

 この作品は、伏線が効果的に用いられているということもあるのですが、じつによく話が作られているな、と感心します。純友が小一条院での将門の様子をどのように把握しているのか、なぜ清忠が季重を見逃したのか疑問だったのですが、そうした疑問が後にきっちりと解決されています。また、その他にも伏線と思える描写が多数あり、それらも今後活きてくるのではないか、と期待されます。これは原作の功績も大きいのでしょうが、脚本も優れているのだと思います。演技面でもおおむね満足のいくもので、重要人物である清忠以外の小一条院の家人たちも、都の退廃を上手く表現できています。これまでのところは、本当によくできたドラマだなあ、と感心しています。

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