上杉和彦『戦争の日本史6 源平の争乱』

 吉川弘文館より2007年2月に刊行されました。『平家物語』などの軍記物の影響を受けた後世の価値観からの構成ではなく、同時代の史料を基礎とした、手堅い歴史叙述になっていると思います。もちろん、これは研究者にとって当然のことではあるのでしょうが、研究者といえども、『平家物語』などの軍記物の価値観から自由であることは、それほど容易なことではないでしょう。

 そのような視点で構成された本書での指摘で興味深いのは、同時代にあっては、源義仲が朝廷からかなり軽視されていたことで、義仲の存在が朝廷にとって重視されるようになったのは、挙兵後かなり経過してからのことです。一方、現代の一般層にはあまり重視されていない甲斐源氏の源信義が、朝廷から源頼朝と同格に評価されていたこともありました。結果論的視点から、争乱を源頼朝の「鎌倉幕府」成立へと収束する一方向の歴史とみてはならない、ということを改めて強く思い知らされます。

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