ヨーロッパ最古の握斧

 ヨーロッパにおける握斧(ハンドアックス)出現の年代について見直した研究(Scott, and Gibert., 2009)が公表されました。これまで、ヨーロッパでは握斧の出現は50万年前頃以降と考えられてきたのですが、この研究では、握斧の出土したスペイン南東部の二つの遺跡を、古地磁気学的分析で再評価したところ、90万年前頃と76万年前頃という結果が得られた、と指摘されています。

 握斧は、石器文化の段階2に相当するとされるアシューリアン(アシュール文化)の代表的石器です。これまで、ヨーロッパで握斧が出現した年代がアフリカよりも100万年ほど遅れていることが、古人類学上の謎の一つとされていたのですが、この研究により、その年代差はかなり縮まったことになります。とはいえ、いぜんとしてアフリカとヨーロッパの握斧出現の年代に大きな違いがあることも確かで、前期~中期更新性の人類の移住の様相や、石器の機能など文化の問題とも関連して、解明すべき問題が多数残されていると言えます。


参考文献:
Scott GR, and Gibert L.(2009): The oldest hand-axes in Europe. Nature, 461, 82-85.
http://dx.doi.org/10.1038/nature08214

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック