短い睡眠でも平気な人

 短い睡眠でも平気な人がいる理由を遺伝的に推測した研究(He et al., 2009)が公表されました。この研究では、短時間睡眠でも平気なことに一部関与する突然変異が発見されました。研究の対象になったのは、平均して常に一晩約6時間しか眠らない母娘が属するある拡大家族です(通常は、一晩8時間の睡眠が必要とされています)。さまざまな候補遺伝子の塩基配列を調べた結果、この母娘だけが「DEC2遺伝子」の変異体を有しており、他の親戚にはないことが判明しました。

 この遺伝子は転写抑制因子であり、特定の他の遺伝子の発現を阻害し、概日リズムの調節に関与していることが既に明らかにされています。さらに、突然変異があるマウスと正常マウスの睡眠サイクルと脳活性を比較したところ、突然変異マウスは睡眠時間が短いことに加えて覚醒期間も頻繁で、睡眠不足期間からの回復も早かった、とのことです。ショウジョウバエでも、同様の突然変異で睡眠相が短くなることが明らかになりました。これらの突然変異がある動物は、人間の睡眠研究における新たなモデルとして役立つだろう、著者たちは述べているとのことです。


参考文献:
He Y. et al.(2009): The Transcriptional Repressor DEC2 Regulates Sleep Length in Mammals. Science, 325, 5942, 866-870.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1174443

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