雲と温暖化の関係

 雲量と温暖化の関係についての研究(Clement et al., 2009)が公表されました。温暖化と雲量の関係については、対照的な見解が提示されています。いくつかのモデルでは、温暖化により低層雲が増加する可能性がある、とされています。しかし、雲自体は、太陽放射をさえぎることで、「負のフィードバック」と呼ばれる冷却効果を生じさせています。温暖化が低層雲を減少させれば、太陽放射はもっと増えて、温暖化を加速させる「正のフィードバック」効果をもたらす可能性があることになります。

 この研究では、過去50年にわたる太平洋北東域上空の雲量の観察データが分析され、低層雲が10年単位で正のフィードバック効果を示していることが明らかになりました。太平洋北東域の雲量の変動は、局所的な海水面温度および大規模な大気循環の両方の変動に関連しているようだ、とのことです。また、主要な気候モデルをいくつか試した結果、正のフィードバック効果を現実的に示したものがひとつだけあることが分かりました。このモデルはまた、気候システムが大気中の二酸化炭素の倍増に比較的影響を受けやすい可能性があることを予測しています。


参考文献:
Clement AC. et al.(2009): Observational and Model Evidence for Positive Low-Level Cloud Feedback. Science, 325, 5939, 460-464.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1171255

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