山田邦明『日本中世の歴史5 室町の平和』

 吉川弘文館より2009年9月に刊行されました。政治史・事件史偏重の叙述になっており、近年の一般向け概説書としては異例と言えるでしょう。この『日本中世の歴史』には、「近年の〈通史〉とは異なり、歴史の基本となる政治の動向を中心に、最新の成果を取り入れ、わかりやすく解説した本格的通史」との編纂意図があるのですが、
https://sicambre.seesaa.net/article/200904article_22.html
それにしても偏りすぎではないか、との印象は拭えません。

 とはいえ、個々の出来事自体には興味深いものが多く、つまらないというわけでもありません。とくに、上杉禅秀が東国において広範な支持を集めていたことは、この時代の政治史に不勉強な私にとっては興味深いものでした。独裁者と言われることの多い6代将軍の足利義教が、治世の前半には有力大名の意向にかなり制約されていることを詳しく知ったのも、収穫の一つでした。残念なのは、P254~257にかけて、15世紀の叙述なのに西暦の表記が14世紀になっていたことで、もっと校正をしっかりとしてもらいたいものです。

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