大河ドラマ『風と雲と虹と』第3回「矢風」

 貞盛は、筑波の歌垣で将門と関係をもった小督を追い、二人で愛を語らっているところを、二人の関係を快く思わない小督の兄である源扶とその配下の者たちに襲われ、貞盛を待っていた将門とともに逃げます。将門や貞盛が馬に乗って逃げる場面は、明らかに合成と分かり、当時の特殊映像技術はこんな水準だったのか、と失望させられてしまいます。将門と貞盛の二人は、鹿島玄道・玄明兄弟の助けを得て、扶の配下を何人か殺しながら、なんとか貞盛の父である国香の館までたどり着きます。玄明を演じている草刈正雄氏は、さすがに現在と比較すると演技の面で見劣りがしますが、思春期~青年期の男性特有の不器用さを結果的に上手く表現できている感じで、配役の妙と言うべきでしょう。

 帰宅した貞盛は、常陸で生きる自分たちが常陸源氏との対立を深めるのは避けねばならない、と将門を言いくるめて、争いの原因は将門にある、と虚偽の報告を父の国香に行ない、国香もそれを受けて、将門に早く陸奥に帰るよう勧めます。ここでも、要領のよい貞盛と、正直で無骨な将門の対照性が強調されており、両者の対照性は、この作品の基調の一つになっているようです。さらに国香は、配下の佗田真樹に命じて、将門が一刻も早く陸奥に帰るよう仕向け、いかにも周到な策士といった様子をうかがわせます。

 そもそも、将門が父良将の赴任先である陸奥から帰郷したのは、良将の留守中に国香が良将の所領を押領しているのではないか、との疑念から良将が将門に帰郷を命じたからだと思われるのですが、無骨で純朴な将門には、そうした疑念をそれとなく探るような芸当は無理です。しかし、国香にとって将門が邪魔者であることは間違いなく、国香はじつは真相を見抜いているようにも思えるのですが、貞盛の虚言を利用できそうだと考えると、いかにも将門を案じているように振舞いながら、体よく将門を陸奥に追い落とすという腹黒さを見せており、このような陰険な国香を佐野浅夫氏は好演しています。

 国香の配下の佗田真樹は、将門とともに陸奥へと向かう途中、国香がじつは信用ならない人物で、将門殺害を命じかねない、と率直に将門に話しています。真樹も将門と同じく実直な好漢といった感じで、第2回で描かれていましたが、将門に好感を抱いているのでしょう。こうした将門の性格が、将門が民人に愛されながらも、権力との戦いで敗れてしまった要因になった、という構図になっているのだと思います。真樹を演じている藤巻潤氏は今回も好演しており、この作品での楽しみな人物がまた一人増えました。

 今回は、前回は名前の明かされなかった小督が源護の娘であることが明かされるなど、次女をのぞく源護一族の主要人物が登場し、その関係が視聴者にもはっきりと示されました。源護を演じている西村晃氏は今回が初登場で、出番はほとんどありませんでしたが、さすがの貫禄といった感じで、今後の出演にも大いに期待しています。護の長男である扶は欲深い乱暴者といった感じですが、演じている峰岸徹氏は上手く表現できており、この作品での出演者たちの好演には感心します。ただ、主役の加藤剛氏の演技が一本調子という棒読みなのが気になります。とはいえ、存在感があり、愚直さはよく表現できているように思うので、致命的な欠点とは考えていません。

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