後期更新世における魚食の証拠
後期更新世における人類による魚食の証拠についての研究(Hu et al., 2009)が報道されました。この研究で分析対象になったのは、北京市房山区周口店近くの田园洞窟で発見された暦年代で4万年前頃の早期現生人類の人骨です。人骨の同位体分析により、その早期現生人類の食性が推測されました。その結果、この早期現生人類の炭素と窒素の同位体比は、同所で見つかった当時の山猫に近く、鹿などの草食動物とは大きく異なっていました。また、この人骨には高度の窒素同位体数値が認められましたが、それが示唆しているのは淡水魚の消費です。さらに、硫黄同位体数値の測定結果も、この初期現生人類による淡水魚の消費を示していました。
こうしたことからこの研究では、この分析結果は、中国における早期現生人類による水産資源消費の直接的証拠を提示する、とされています。たいへん興味深い研究で、今後このような分析が進むことにより、更新世の人類の食性がさらに明らかになることが期待されます。もちろん、人類による水産資源の利用はこれ以前にさかのぼり、現在のところその起源地はアフリカと考えられます(関連記事)。また、この田园人よりも少し前の頃には、ネアンデルタール人も水産資源を利用していました(関連記事)。ネアンデルタール人による水産資源の利用は、115000年前頃までさかのぼります(関連記事)。なお、上記報道では、この田园人の時代は釣り針などの道具が登場する前だとされていますが、コンゴのカタンダでは、銛と思われる精巧な道具が89000年前頃から使用されており、そのような精巧な銛は、ヨーロッパでは14000年前頃にならないと登場しないとされています(Brooks et al.,1995)。
参考文献:
Brooks AS. et al.(1995): Dating and context of three middle stone age sites with bone points in the Upper Semliki Valley, Zaire. Science, 268, 5210, 548-553
http://dx.doi.org/10.1126/science.7725099
Hu Y. et al.(2009): Stable isotope dietary analysis of the Tianyuan 1 early modern human. PNAS, 106, 27, 10971-10974.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0904826106
こうしたことからこの研究では、この分析結果は、中国における早期現生人類による水産資源消費の直接的証拠を提示する、とされています。たいへん興味深い研究で、今後このような分析が進むことにより、更新世の人類の食性がさらに明らかになることが期待されます。もちろん、人類による水産資源の利用はこれ以前にさかのぼり、現在のところその起源地はアフリカと考えられます(関連記事)。また、この田园人よりも少し前の頃には、ネアンデルタール人も水産資源を利用していました(関連記事)。ネアンデルタール人による水産資源の利用は、115000年前頃までさかのぼります(関連記事)。なお、上記報道では、この田园人の時代は釣り針などの道具が登場する前だとされていますが、コンゴのカタンダでは、銛と思われる精巧な道具が89000年前頃から使用されており、そのような精巧な銛は、ヨーロッパでは14000年前頃にならないと登場しないとされています(Brooks et al.,1995)。
参考文献:
Brooks AS. et al.(1995): Dating and context of three middle stone age sites with bone points in the Upper Semliki Valley, Zaire. Science, 268, 5210, 548-553
http://dx.doi.org/10.1126/science.7725099
Hu Y. et al.(2009): Stable isotope dietary analysis of the Tianyuan 1 early modern human. PNAS, 106, 27, 10971-10974.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0904826106
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