福島正樹『日本中世の歴史2 院政と武士の誕生』

 吉川弘文館より2009年6月に刊行されました。政治史を中心に中世初期の様相が概観され、院政を中世的な政治体制とする現在の通説にしたがった叙述となっています。荘園についての説明が少ないのが残念ではありますが、意図的に政治史中心の叙述にしたということなので、仕方のないところでしょう。全体的に、近年の研究成果を取り入れてよくまとまった概説書になっていると思います。院政を古代国家最後の政治形態とする歴史認識が戦後日本では浸透していましたが、現在では否定されています。しかし、現在でも一般的にはそのような歴史認識が根強いのかもしれませんから、その意味でも本書の意義は低くないだろう、と思います。

 本書では、最後のほうで鎌倉幕府成立の歴史的意義について少しだけ触れられ、鎌倉幕府成立の偶然性を指摘した見解も紹介されています。そうならば、藤原師通と堀河天皇が若くして死亡したことが、院政という政治形態の定着にかなりの影響を及ぼしているようにも思われるので、院政の偶然性にも言及があってよかったように思います。

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