ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの多様性

 ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)のミトコンドリアDNAの配列を復元し、ネアンデルタール人の人口規模について示唆した研究(Briggs et al., 2009)が公表されました。ネアンデルタール人のDNA研究を制限してきたのは、標本数の少なさとDNAの損傷状態でした。この研究では、標本の破壊を大幅に減少し、特定領域の選択的な塩基配列を決定する新たな方法が用いられ、5人のネアンデルタール人のほぼ完全なミトコンドリアDNAの塩基配列が復元されました。

 その結果、地理的にはスペインからロシアまで、年代的には70000~38000年前のネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの多様性は、現生人類の1/3ていどだと分かりました。これは、ネアンデルタール人の人口規模が、現生人類や現生類人猿よりずっと小さかったことを示唆している、とこの研究では指摘されています。ただ現時点では、やはり標本数が少ないことは否めず、今後ネアンデルタール人のミトコンドリアDNAの分析数が増加していけば、ネアンデルタール人の遺伝的多様性について見直す必要が出てくるかもしれません。


参考文献:
Briggs AW. et al.(2009): Targeted Retrieval and Analysis of Five Neandertal mtDNA Genomes. Science, 325, 5938, 318-321.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1174462

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