河合信和『人類進化99の謎』
文春新書の一冊として、文藝春秋社より2009年に刊行されました。古人類学に関する河合氏の最新の著書ということで、迷うことなく購入しました。河合氏の2年前の著書『ホモ・サピエンスの誕生』と比較すると、敷居が低くなっているな、と思いました。しかし、見開き2ページでのQ&A形式を採用しているため、人類史についての体系的な知識を得るには不向きで、あるていど古人類学についての知識がある人を対象にしているかな、と思います。とはいえ、全体的に本書はたいへんわかりやすく、あるていど人類史の流れをつかんでいる人にとっては、古人類学についての最新の見解を気軽に知ることができる良書と言ってよいだろう、と思います。
本書の記述でやや気になったのは、ネアンデルタール人についての評価が低いことで、ネアンデルタール人の象徴的思考能力は現生人類(行動学的現代人)と比較して限定的だった、と強調されていることです。確かに、現在の考古学的証拠からは、そのように考えるほうが妥当だろうとは思いますが、数万年以上前の人類の活動のうち、どれだけが現在まで考古学的証拠として残るかと考えると、断定するのには慎重であるべきだと思います。なお、ネアンデルタール人と現生人類との知的能力について議論されるさい、現生人類には可能でネアンデルタール人には不可能なことがどれだけあったか、という視点で語られることが専らですが、ネアンデルタール人にできて、現生人類にはできない何かがあったのではないか、との視点もときには必要だろう、と思います。
本書の記述でやや気になったのは、ネアンデルタール人についての評価が低いことで、ネアンデルタール人の象徴的思考能力は現生人類(行動学的現代人)と比較して限定的だった、と強調されていることです。確かに、現在の考古学的証拠からは、そのように考えるほうが妥当だろうとは思いますが、数万年以上前の人類の活動のうち、どれだけが現在まで考古学的証拠として残るかと考えると、断定するのには慎重であるべきだと思います。なお、ネアンデルタール人と現生人類との知的能力について議論されるさい、現生人類には可能でネアンデルタール人には不可能なことがどれだけあったか、という視点で語られることが専らですが、ネアンデルタール人にできて、現生人類にはできない何かがあったのではないか、との視点もときには必要だろう、と思います。
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