世界最古の土器?

 中国湖南省道県の玉蟾岩洞窟で発見された土器の年代についての研究(Boaretto et al., 2009)が公表されました。玉蟾岩洞窟は後期更新世の遺跡で、石器・骨器・貝製の道具といった人工物の他に、多量の灰、鹿・猪・鳥・亀・魚などの動物骨が大量に発見されています。玉蟾岩洞窟でとくに注目されるのは、土器が発見されていることで、土器の起源をめぐる議論において、より確実な年代の特定が求められています。なお、以下の年代はすべて較正されたものです。

 後期更新世の土器が発見された中国南部の遺跡としては、江西省の万年仙人洞遺跡や吊桶環遺跡も知られています。じゅうらいの研究では、これら中国南部の遺跡で発見された土器の年代は、16000~10000年前とされていました。しかしこの研究では、じゅうらいの研究では土器の破片を含む複雑な堆積層の系統的年代分析がなされていないと指摘され、その点に注意が払われつつ年代の特定がなされています。

 この研究で用いられた試料は、動物骨のコラーゲンと炭です。土器から得られた試料や、土器の断片のあった前後の地層の試料から、玉蟾岩洞窟で発見されたもっとも古い土器の年代は、放射性炭素年代測定法で18300~17500年前とされ、日本の最古級の土器よりも古くなります。こうしたことからこの研究では、土器製作が現在の中国南部で始まった、との見解が支持されています。

 玉蟾岩洞窟で発見された土器は、粗雑な作りで厚く、厚みは均等ではなくて、400~500℃という低温度で焼かれていたと推測されています。こうしたことからも、世界最古の土器に相応しいとの見解も一部であるかもしれません。しかし、土器の起源地がどこかという問題が、これで解決したというわけではなく、今後、さらに古い土器がどこかで発見される可能性は高いと思います。たとえば、現在はロシア領となっている、ユーラシア大陸東部のオホーツク海や日本海の沿岸地域も、その有力候補地と言えます。また、アフリカでさらに古い土器が発見される可能性もあるのですが、現時点では、日本列島も含むユーラシア東部圏で土器製作が始まった可能性が高い、と考えるのが妥当でしょう。


参考文献:
Boaretto E. et al.(2009): Radiocarbon dating of charcoal and bone collagen associated with early pottery at Yuchanyan Cave, Hunan Province, China. PNAS, 106, 24, 9595-9600.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0900539106

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