青木美智男『日本の歴史別巻 日本文化の原型』(2009年5月刊行)
小学館『日本の歴史』の別巻となります。文化を受容する立場という視点から、日本文化の原型としての江戸時代の文化が概観されています。衣食住という生活の基本要素から、出版・演劇・旅にいたるまで、多様な分野が取り上げられていますが、これらの文化を作る側ではなく、受容・消費する側の視点を中心とした叙述となっている点が、作品論・作者論になる傾向の強い文化史としてはやや異色と言えるかもしれません。
私が不勉強なこともあって、個々に紹介された史実には興味深いものが多く、江戸時代の文化の成熟を改めて思い知らされます。また、当然のことながら、200年以上続いた江戸時代は年代的にも地理的にも一様ではなく、本書の記述からもそのことがうかがえます。本書を読んで改めて思ったのは、江戸時代には、多様性が維持されつつも、文字文化などの点で日本という一体性が育まれつつあったことで、近代における国民国家形成にあたって、江戸時代の蓄積が大きかったということです。近年、「良心的」な人々を中心に、近代国民国家の虚構性を強調する見解が有力になっているようですが、前近代との連続性について、もっと考慮すべきではないか、とも思います。
私が不勉強なこともあって、個々に紹介された史実には興味深いものが多く、江戸時代の文化の成熟を改めて思い知らされます。また、当然のことながら、200年以上続いた江戸時代は年代的にも地理的にも一様ではなく、本書の記述からもそのことがうかがえます。本書を読んで改めて思ったのは、江戸時代には、多様性が維持されつつも、文字文化などの点で日本という一体性が育まれつつあったことで、近代における国民国家形成にあたって、江戸時代の蓄積が大きかったということです。近年、「良心的」な人々を中心に、近代国民国家の虚構性を強調する見解が有力になっているようですが、前近代との連続性について、もっと考慮すべきではないか、とも思います。
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