水中から陸上へ

 陸生動物の進化系統樹について論じた研究(Callier et al., 2009)が公表されました。この研究では、初期の原始的両生類とされるイクチオステガの腕骨が分析されました。その結果、イクチオステガの上腕骨の位置が成長に伴い徐々に変化することが分かりました。これは、イクチオステガの腕の機能は一生を通じて変化し、イクチオステガは幼体期には多くの時間を水中で過ごし、後年は陸上に移動することを示しています。

 これまで、化石記録ではアカントステガがもっとも魚類に近い陸生動物だ、と考えられてきました。しかし、イクチオステガの前肢は移動するというこの分析結果によって、イクチオステガは陸生動物の系統樹上のより根元に近い位置に置くべきであり、 アカントステガなどの種は別の系統樹ではなく、イクチオステガの系統から進化した可能性がある、と指摘されています。陸生動物出現の様相もしだいに詳細に判明しつつあるようで、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Callier V. et al.(2009): Contrasting Developmental Trajectories in the Earliest Known Tetrapod Forelimbs. Science, 324, 5925, 364-367.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1167542

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