上部旧石器時代のスペイン北部における食資源

 上部旧石器時代のスペイン北部における、食資源としての魚について論じた研究(Adán et al., 2009)が公表されました。この研究によると、北部スペインでは、上部旧石器時代にサケ科の魚を一定のパターンで利用していた可能性が高いことが分かったそうです。この研究では、最終最大氷期という人類にとって暮らしにくい環境下で、食資源としての魚(サケ科)の利用が進展した可能性が指摘されています。

 現生人類にとって、動物性の食資源としての、魚も含む海洋資源が重要だったのではないか、という可能性については、これまでにもたびたび指摘がありましたが、確かに、ネアンデルタール人や現生人類以前の人類が海洋資源を恒常的に利用した確実な証拠はなく、悪化した環境下では、人類にとって海洋資源はたいへん貴重なものだった可能性がありますし、この研究でも指摘されているように、人類の拡大における食資源としての魚の役割も見逃せないでしょう。ただ、ネアンデルタール人や現生人類以前の人類の海洋資源の利用については、今後新たな発見があるかもしれず、人類の海洋資源の恒常的な利用が、さらにさかのぼる可能性もあるでしょう。


参考文献:
Adán GE. et al.(2009): Fish as diet resource in North Spain during the Upper Paleolithic. Journal of Archaeological Science, 36, 3, 895-899.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jas.2008.11.017

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