大門正克『日本の歴史第15巻 戦争と戦後を生きる』(2009年2月刊行)

 小学館『日本の歴史』15冊目の刊行となります。生存の視点から、1930~1955年の日本社会の在り様が描かれています。全集ものの通史としては珍しい時代区分と言えるでしょうが、この時代に生存の仕組みが大きく変わった、というのが本書の見解です。

 本書が対象とする時代の日本は、帝国が崩壊し、いわば「小日本」として再生する時期に相当します。本書は、こうした激動の時期に各個人の運命が翻弄されたことを、一般向け通史としては詳細に指摘しています。そこから改めて思い知らされるのは、戦後の感覚からすると広大な地理的範囲にまたがる日本の姿で、敗戦前までの大日本帝国はまぎれもない帝国であったわけです。本書も、栄光の近代日本という物語を好む人々にとっては不満の残る内容となっているでしょうが、こういう一般向け通史もなかなか興味深いものです。

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