岩明均『ヒストリエ』5巻発売(講談社)
今年の2月に5巻が刊行されていたことを、不覚にも最近になって知り、ただちに購入しました。第3巻までの内容は以下の記事にて、
https://sicambre.seesaa.net/article/200707article_28.html
第4巻の内容は以下の記事にて述べています。
https://sicambre.seesaa.net/article/200708article_18.html
第4巻の最後で、ようやく第1巻の冒頭の場面と時系列的につながったわけですが(紀元前343年)、この第5巻は、故郷(生地ではないのですが)のカルディアに帰還したエウメネスが、旧友トルミデスと再会する場面から始まります(その前に一度、すれちがってはいますが、トルミデスのほうは確信が持てませんでした)。
エウメネスはさらに、かつての兄だったヒエロニュモス(直接的な血のつながりはありませんが)と遭遇し、自分がカルディアを去った後、かつての家族や親友がどうなったのか知ります。養母(ヒエロニュモスの実母)が3年前に死んだことをヒエロニュモスから知ったエウメネスは、ヒエロニュモスとともに養父母の墓を訪れ、かつてカルディアを去るさいに、よくも今まで騙してくれたな!と叫んだことを謝りたかったのだ、と言い、養父母に感謝の念を述べます。
帰郷したエウメネスが遭遇したのは、歓迎すべき人々だけではありませんでした。トルミデスの家で一晩を過ごしたエウメネスは、エウメネスの養父の殺害を命じたヘカタイオスと、その配下でじっさいに手を下したゲラダスとも再会してしまいます。エウメネスが復讐のために帰郷したのではないか、と疑ったヘカタイオスは、ゲラダスに命じてエウメネスを殺そうとしますが、ゲラダスは返り討ちにあってしまいます。
殺人犯になってしまったエウメネスは、早くカルディアから脱出しようとしますが、マケドニアの大軍が包囲するなか、ともにカルディアに入場したアンティゴノスの配下であるメナンドロスと再会します。カルディアに入場するさいのエウメネスの胆力・知力を高く評価していたアンティゴノスは、自分の配下にならないか、とエウメネスを誘っていました。3日後に広場で返事をきかせてほしい、とアンティゴノスは言っていたのですが、エウメネスと再会したメナンドロスは、事態が順調に進んだので、翌日に広場で会おう、と言ってきます。
エウメネスが返事をためらっていると、いっそのこと我々が泊まっているところに泊まらないか、とメナンドロスは誘います。そこはヘカタイオスの家だったので、エウメネスはしばらく思案しますが、異民族の姿で殺人犯が町をうろつくのはまずいと思い、カルディアの実力者であるヘカタイオスの大邸宅で上手くまぎれるほうがよいのではないか、と考えてメナンドロスとともにヘカタイオスの邸宅に向かいます。
しかし、ヘカタイオスに正体を見破られてしまい、ヘカタイオスは家人たちにエウメネスを殺させようとしますが、エウメネスに返り討ちにあってしまいます。エウメネスが剣術にも優れていることを知ったアンティゴノスは、ますますエウメネスを高く評価し、剣の達人であるメナンドロスに、殺さず怪我もさせずにエウメネスを倒すように命じます。これで、ヘカタイオスにも恩を売ろうという考えなのでしょう。
メナンドロスはエウメネスを剣で圧倒しつつも、巧みに怪我をさせぬように邸宅から脱出させます。エウメネスが予想以上に足の速いことを見たメナンドロスは、エウメネスを逃がすことにしました。翌朝、エウメネスは約束通り広場に現れ、アンティゴノスとともに、マケドニアの大軍の待ち構える城外に出ます。そこで明らかになったのは、アンティゴノスは偽名を使っており、じつはマケドニア王フィリッポス2世だということでした。
エウメネスはマケドニア王フィリッポス2世に仕えることになり、マケドニアの首都ペラで暮らすことになります。フィリッポス2世は、典型的なマケドニア人について知ってもらいたい、との意図から、エウメネスをマケドニア貴族アッタロスの屋敷に居候させることにします。そこでも才覚を発揮し、アッタロスやその姪とも馴染んできたエウメネスは、ある日フィリッポス2世の命により王宮に赴きます。
そこでフィリッポス2世は、幹部候補生育成の学校に行くか、管理部門の職に就くよう命じます。管理部門の平時の職務は王立図書館の管理・運営だと聞いたエウメネスは、迷うことなく就職することに決めます。アリストテレスからエウメネスは手先が器用だと聞いていたフィリッポス3世は、その場でさらに、3~4歳の男子が喜ぶような玩具を1つ作るよう、エウメネスに命じます。
エウメネスは2頭立ての戦車を作り、献上します。フィリッポス2世が言っていた3~4歳の男子とは、10代後半くらいのアリダイオスというフィリッポス2世の王子でした。アリダイオスは知的障害者であり、それゆえに、フィリッポス2世は3~4歳の男子が喜ぶような玩具を注文したのでした。このアリダイオスとは、後のフィリッポス3世のことと思われます。アリダイオスはエウメネスの作った玩具に喜び、その様子を見たアリダイオスの母は、エウメネスに感謝します。フィリッポス2世の御前から退出したエウメネスは、王宮で蛇の形をした痣のある男子と遭遇します。『ヒストリエ』は単行本でしか読んでいないので断言はできませんが、この男子こそ、後のアレクサンドロス大王だと思われます。
以上、5巻の内容についてざっと述べてきましたが、1巻の前半部分と話がつながっていくあたりは見事であり、ひじょうによく話を練ったうえで描かれているな、と感心しました。エウメネスとともにカルディアに入城したアンティゴノスは、アンティゴノス朝の開祖アンティゴノス1世のことだと予想していたので、フィリッポス2世だったのはやや意外でした。ただ、改めて1巻の冒頭を読んでみると、それらしい描写も見られます。
この5巻では、名前しか出なかったものの、アッタロス邸の庭の仕掛けを築いたディアデスや、わずかしか登場しなかったアレクサンドロス大王の母オリュンピアスが、後の話に重大な影響を及ぼしそうです。とくに、オリュンピアスの描かれた謎めいた場面は、かなり重要な伏線になりそうで、どのように話がつながっていくのか、今から楽しみです。第6巻が刊行されるのはかなり先になりそうですが、緻密な構成の物語だけに、質の高い話がさらに展開されるのではないか、と期待しています。
https://sicambre.seesaa.net/article/200707article_28.html
第4巻の内容は以下の記事にて述べています。
https://sicambre.seesaa.net/article/200708article_18.html
第4巻の最後で、ようやく第1巻の冒頭の場面と時系列的につながったわけですが(紀元前343年)、この第5巻は、故郷(生地ではないのですが)のカルディアに帰還したエウメネスが、旧友トルミデスと再会する場面から始まります(その前に一度、すれちがってはいますが、トルミデスのほうは確信が持てませんでした)。
エウメネスはさらに、かつての兄だったヒエロニュモス(直接的な血のつながりはありませんが)と遭遇し、自分がカルディアを去った後、かつての家族や親友がどうなったのか知ります。養母(ヒエロニュモスの実母)が3年前に死んだことをヒエロニュモスから知ったエウメネスは、ヒエロニュモスとともに養父母の墓を訪れ、かつてカルディアを去るさいに、よくも今まで騙してくれたな!と叫んだことを謝りたかったのだ、と言い、養父母に感謝の念を述べます。
帰郷したエウメネスが遭遇したのは、歓迎すべき人々だけではありませんでした。トルミデスの家で一晩を過ごしたエウメネスは、エウメネスの養父の殺害を命じたヘカタイオスと、その配下でじっさいに手を下したゲラダスとも再会してしまいます。エウメネスが復讐のために帰郷したのではないか、と疑ったヘカタイオスは、ゲラダスに命じてエウメネスを殺そうとしますが、ゲラダスは返り討ちにあってしまいます。
殺人犯になってしまったエウメネスは、早くカルディアから脱出しようとしますが、マケドニアの大軍が包囲するなか、ともにカルディアに入場したアンティゴノスの配下であるメナンドロスと再会します。カルディアに入場するさいのエウメネスの胆力・知力を高く評価していたアンティゴノスは、自分の配下にならないか、とエウメネスを誘っていました。3日後に広場で返事をきかせてほしい、とアンティゴノスは言っていたのですが、エウメネスと再会したメナンドロスは、事態が順調に進んだので、翌日に広場で会おう、と言ってきます。
エウメネスが返事をためらっていると、いっそのこと我々が泊まっているところに泊まらないか、とメナンドロスは誘います。そこはヘカタイオスの家だったので、エウメネスはしばらく思案しますが、異民族の姿で殺人犯が町をうろつくのはまずいと思い、カルディアの実力者であるヘカタイオスの大邸宅で上手くまぎれるほうがよいのではないか、と考えてメナンドロスとともにヘカタイオスの邸宅に向かいます。
しかし、ヘカタイオスに正体を見破られてしまい、ヘカタイオスは家人たちにエウメネスを殺させようとしますが、エウメネスに返り討ちにあってしまいます。エウメネスが剣術にも優れていることを知ったアンティゴノスは、ますますエウメネスを高く評価し、剣の達人であるメナンドロスに、殺さず怪我もさせずにエウメネスを倒すように命じます。これで、ヘカタイオスにも恩を売ろうという考えなのでしょう。
メナンドロスはエウメネスを剣で圧倒しつつも、巧みに怪我をさせぬように邸宅から脱出させます。エウメネスが予想以上に足の速いことを見たメナンドロスは、エウメネスを逃がすことにしました。翌朝、エウメネスは約束通り広場に現れ、アンティゴノスとともに、マケドニアの大軍の待ち構える城外に出ます。そこで明らかになったのは、アンティゴノスは偽名を使っており、じつはマケドニア王フィリッポス2世だということでした。
エウメネスはマケドニア王フィリッポス2世に仕えることになり、マケドニアの首都ペラで暮らすことになります。フィリッポス2世は、典型的なマケドニア人について知ってもらいたい、との意図から、エウメネスをマケドニア貴族アッタロスの屋敷に居候させることにします。そこでも才覚を発揮し、アッタロスやその姪とも馴染んできたエウメネスは、ある日フィリッポス2世の命により王宮に赴きます。
そこでフィリッポス2世は、幹部候補生育成の学校に行くか、管理部門の職に就くよう命じます。管理部門の平時の職務は王立図書館の管理・運営だと聞いたエウメネスは、迷うことなく就職することに決めます。アリストテレスからエウメネスは手先が器用だと聞いていたフィリッポス3世は、その場でさらに、3~4歳の男子が喜ぶような玩具を1つ作るよう、エウメネスに命じます。
エウメネスは2頭立ての戦車を作り、献上します。フィリッポス2世が言っていた3~4歳の男子とは、10代後半くらいのアリダイオスというフィリッポス2世の王子でした。アリダイオスは知的障害者であり、それゆえに、フィリッポス2世は3~4歳の男子が喜ぶような玩具を注文したのでした。このアリダイオスとは、後のフィリッポス3世のことと思われます。アリダイオスはエウメネスの作った玩具に喜び、その様子を見たアリダイオスの母は、エウメネスに感謝します。フィリッポス2世の御前から退出したエウメネスは、王宮で蛇の形をした痣のある男子と遭遇します。『ヒストリエ』は単行本でしか読んでいないので断言はできませんが、この男子こそ、後のアレクサンドロス大王だと思われます。
以上、5巻の内容についてざっと述べてきましたが、1巻の前半部分と話がつながっていくあたりは見事であり、ひじょうによく話を練ったうえで描かれているな、と感心しました。エウメネスとともにカルディアに入城したアンティゴノスは、アンティゴノス朝の開祖アンティゴノス1世のことだと予想していたので、フィリッポス2世だったのはやや意外でした。ただ、改めて1巻の冒頭を読んでみると、それらしい描写も見られます。
この5巻では、名前しか出なかったものの、アッタロス邸の庭の仕掛けを築いたディアデスや、わずかしか登場しなかったアレクサンドロス大王の母オリュンピアスが、後の話に重大な影響を及ぼしそうです。とくに、オリュンピアスの描かれた謎めいた場面は、かなり重要な伏線になりそうで、どのように話がつながっていくのか、今から楽しみです。第6巻が刊行されるのはかなり先になりそうですが、緻密な構成の物語だけに、質の高い話がさらに展開されるのではないか、と期待しています。
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