中部旧石器時代における現代的行動

 中部旧石器時代における現代的行動について検証した研究(Bar-Yosef Mayer et al., 2009)が公表されました。この研究で取り上げられているのは、現生人類・現代的行動の起源について論じるさいに、ほぼ必ずといってよいほど言及されるイスラエルのカフゼー洞窟です。カフゼー洞窟では、「墓」に埋葬された解剖学的現代人の骨とともに、炉床・糸状のものが通されて数珠繋ぎのようになっていたと思われる穴の開いた貝殻・動物骨・赤いオーカーの塊が発見されています。

 これらの遺物、とくに数珠繋ぎのような状態にされていたと思われる貝殻や、顔料として用いられていたと思われるオーカーは、現代的行動の考古学的指標とされており、カフゼー洞窟はその好例と言えるでしょう。こうした考古学的指標が、中部旧石器時代のムステリアンと共伴していることから、現代的行動・象徴的思考は上部旧石器時代とともに始まったのではなく、中部旧石器時代にその起源がある、と考えるのが妥当でしょう。


参考文献:
Bar-Yosef Mayer DE. et al.(2009): Shells and ochre in Middle Paleolithic Qafzeh Cave, Israel: indications for modern behavior. Journal of Human Evolution, 56, 3, 307-314.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2008.10.005

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