エレクトスの適応力

 北京市房山区周口店で発見されたエレクトス化石の年代を再検証し、エレクトスの適応力について推測した研究(Shen et al., 2009)が報道されました。この研究では、エレクトス化石が発見された地層の年代が、アルミニウム-26とベリリウム-10に基づく新たな年代測定法により再検証されました。その結果、人工物も出土している下層の文化層7~10の年代は、77万±8万年前頃と推測されました。

 これは、じゅうらいの推定値よりも年代が古くなるという意味でも注目されますが、さらに興味深いのは、気候との関連が示唆されていることです。この年代は、寒冷な海洋同位体ステージ18に対応しているのではないか、と推測されます。それが示唆しているのは、エレクトスは温暖な時期にのみ北方の寒冷な地域に進出したのではなく、寒冷な気候にもあるていど対応できたのではないか、ということです。

 もっとも、北京の夏は暑く、冬季には華南へ退避したというように、季節に応じて大移動を繰り返したのではないか、との反論もあるかもしれません。ただ、これまでのところ、エレクトスが1世代のうちに定期的に大移動を繰り返したことを示唆する証拠は見つかっておらず、そうした想定にはかなりの無理があると思います。


参考文献:
Shen G. et al.(2009): Age of Zhoukoudian Homo erectus determined with 26Al/10Be burial dating. Nature, 458, 7235, 198-200.
https://doi.org/10.1038/nature07741

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