馬の家畜化の起源

 馬の家畜化について論じた研究(Outram et al., 2009)が報道されました。この研究によると、現在の北カザフスタン地域で5700~5100年前に栄えたボタイ文化から、現時点では最古となる確実な馬の家畜化の証拠が得られたそうです。交通・経済・軍事面などで、馬の家畜化が人類の歴史に大きな影響を与えたことは言うまでもありませんが、その起源の確実な証拠となると、検出が困難なのが現状と言うべきでしょう。そうした意味で、この研究はたいへん貴重だと思います。

 この研究によると、ボタイ文化における馬の家畜化の証拠として、次の3点が挙げられるそうです。1点目は、ボタイ文化の馬の骨が、旧石器時代の野生馬のそれではなく、青銅器時代の家畜馬のそれと類似していることです。2点目は、ボタイ文化の複数の馬の歯に、轡がつけられていたことを示す形跡が認められたことです。3点目は、ボタイ文化の陶器の破片から得た同位体データにより、陶器に付着した脂肪が貯蔵されていた馬乳のものだ、と判明したことです。このように複数の証拠がそろったことから、遅くとも5700~5100年前には、馬の家畜化が行なわれていたことはほぼ確実だと思います。


参考文献:
Outram AK. et al.(2009): The Earliest Horse Harnessing and Milking. Science, 323, 5919, 1332-1335.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1168594

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