「ネアンデルタール人の謎~最新報告・ゲノム解読の試み~」補足

 NHKのBSハイビジョンで放送されたこの番組については、今年2月1日分の記事で取り上げました。この番組について言及したブログの記事を読んで、コメントしようと思ったのですが、エラーによりコメントできなかったので、ブログの記事とし、トラックバックを送ることにします。

 番組内では赤毛、薄い体色、言語を操る遺伝子という三つのネタについて取り上げたようだが、言語遺伝子が現生人類に受け継がれた可能性は否定されているし、薄い体色も、赤毛遺伝子も、原生人類のそれとネアンデルタール人のそれが別物であることは既に確認されている。

 番組をじっさいに見た者として、念のために申しあげておくと、ネアンデルタール人にも赤毛をもたらすような遺伝子はあったが、それは現代人型とは異なっており、両者の間に混血がなかった傍証になるのではないか、という趣旨の見解が番組では紹介されていて、この点では近年の研究成果を踏まえたものとなっています。

 あるブログでは、赤髪の遺伝子がネアンデルタール人起源だと主張するような番組をNHKが放送していた、と述べられていましたが、それは誤解に基づくものだと思います。もっとも、そのブログでは、NHKスペシャル『女と男』でそのような見解が提示されていた、と解釈できるような記述になっていますが、『女と男』は見ていないので、『女と男』でそのような見解が紹介されたのか、私には分かりません。

 言語遺伝子というかFOXP2遺伝子については、ネアンデルタール人と現生人類との混血の根拠になり得るかもしれませんが、試料汚染の可能性を排除するだけの強い根拠は認められないとも指摘されています。また、この番組で紹介されたような、ネアンデルタール人から現生人類へとFOXP2遺伝子の現代人型の変異が伝わった可能性は低そうで、これまでの諸研究から推測すると、交雑により現生人類からネアンデルタール人に伝わったか、試料汚染のどちらかである可能性が高そうです。

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