現生人類の出アフリカ時の性比

 現生人類の出アフリカ時の遺伝的構成についての研究(Keinan et al., 2009)が報道されました。この研究では、アフリカ・北ヨーロッパ・東アジアの各現代人集団のX染色体と常染色体が比較されました。その結果、現生人類のアフリカからの拡散の頃に、性比が平均的で自然選択が大きな影響を及ぼさなかった場合の期待値と比較して、X染色体はより多くの遺伝的浮動を経験した、と推測されました。一方、東アジアとヨーロッパへの拡散のさいには類似したパターンはなかった、と推測されました。

 こうしたことからこの研究では、現生人類の出アフリカにさいして、女性の数が減少して性比が偏っていたか、X染色体に大きな影響を与えるような自然選択が存在したのではないか、と推測されています。もし前者だとしたら、狩猟民においては、短距離の移動はおもに女性が、長距離の移動はおもに男性が行なってきた、という人類学の仮説に合致している、とこの論文の筆頭著者のアロン=ケイナン博士は主張しています。


参考文献:
Keinan A. et al.(2009): Accelerated genetic drift on chromosome X during the human dispersal out of Africa. Nature Genetics, 41, 1, 66-70.
http://dx.doi.org/10.1038/ng.303

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