さかのぼる現生人類の起源?

 以前に発見されていた中期石器文化の石器の年代を特定した研究(Morgan, and Renne., 2008)が報道されました。この研究では、1970年代にエチオピアのこのガデモッタ遺跡で発見された石器の年代が、火山灰層をアルゴン・アルゴン法で分析することにより特定されました。その結果、中期石器文化的な石器が、すくなくとも276000年前までさかのぼることが分かりました。これは、他の中期石器文化よりも古い年代であり、最古の中期石器文化の出現は、現在のところ最古のホモ=サピエンス(現生人類)化石よりも古い、とこの研究では指摘されています。

 こうしたことから報道では、「人類の進化が8万年早まる可能性」との表題のもとにこの研究を紹介していますが、これはやや問題のある表題だと思います。報道の本文中でも指摘されていますが、この石器には人骨が共伴しておらず、どの人類種がこの石器文化の担い手だったのか、確定していません。そもそも、技術的発展と生物学的進化とを一体のものとする見解に問題があると言うべきで、石器技術と人類種とを安易に結びつけることは避けるべきでしょう。


参考文献:
Morgan LE, and Renne PR.(2008): Diachronous dawn of Africa's Middle Stone Age: New 40Ar/39Ar ages from the Ethiopian Rift. Geology, 36, 12, 967-970.
http://dx.doi.org/10.1130/G25213A.1

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